国の行方、教育改革
生きて働く為の知識、技能の他に、未知の状況にも対応でき、学びを人生や社会に生かせる人材を生み出す、とする教育改革が進められている。従来は知識の量を増やす事に重点が置かれていたものを思考力、判断力、表現力を重視する教育に変えるのだという。
小中高校では2020年から本格的に実施、それを受けて大学入試センター試験は廃止されて「大学入学共通テスト」となり、2024年からは問題の内容が完全に変えられる。
具体的には、理科や数学にも記述式問題が増え、選択肢式では複数の正答がある問題も登場するのだという。語学では入試は廃止し、高校在学中に一般の語学検定試験を受け、その得点を採用となっている。既に文科省から方針やモデル問題が示されているので今年の入試あたりから傾向として変わっていくのではないかと思われる。
現在は、テレビのクイズ番組でも漢字、地名、統計数値などを知っているかどうかだけを試す問題中心である。理系の問題でも同様で、思考力が必要な問題は避けられ、高学歴タレントは知識の量故に珍重されている。
たまに地頭力(自頭力)を試すと称して、なぞなぞのような問題が出ることがある。地頭力とは持ち合わせの知識を応用して未知の世界に切り込む力で、教育改革でもこの地頭力という言葉が出てくる。
イタリア人の物理学者エンリコ・フェルミは、フェルミ推定と呼ばれる推論プロセスを考え出した。既知の知識を組み合わせて、全くの未知の現象や数値を推定する一種の思考実験で、後から推論プロセスを辿って精度の検証もできる。フェルミが出した問題の一つは「シカゴにはピアノ調律師が何人いるか」だった。地頭力が必要で、またそれを鍛える手法だといわれる。
しかし、そうは言っても知識の量は重要である。知識が無ければ地頭力もフェルミ推定も無い。地頭力にだけ優れ、反射での謎解き得意のエリートの天下では「笑点」の舞台のような世の中になってしまわないか、という心配もある。