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「800字文学館」

メキシコ、マヤ文明

斉藤 征雄

 人類がユーラシア大陸から、当時陸続きだったベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸へ入ったのは、一万三五〇〇年前といわれる。ちなみにそれより前に、同じモンゴロイドの人種が樺太などから日本列島に入って縄文人になったと考えられる。
 アメリカ大陸に入った人々は、トウモロコシの原始農耕を基礎とする都市文明を築いた。その代表的なものがメキシコ・ユカタン半島に生まれたマヤ文明である。盛期は七世紀頃といわれるが、古期はBC8000年まで遡る。
 高度に発達した象形文字、二十進法による数の表記、精密な暦法などを持ち、都市には壮大なピラミッドを構築した。ユカタン半島にはこうしたマヤ文明の遺跡が八〇以上も残っている。
 マヤ文明は九世紀以降衰退しアステカ族に受け継がれたが、アステカ文明は十六世紀にスペインによって滅亡させられた。

 メキシコシティの国立博物館で基礎知識を得て、ユカタン半島のメリダに移動する。飛行機を待っているとM7.2の地震があった。身がすくむ。幸い被害には遭わなかったが、ここも有数の地震地帯であることを実感した。
 ウシュマルとチチェンイッツァの二つの世界遺産を見学した。どれも石造りの幾何学模様が美しい。そして精巧である。南米のインカの遺跡を観た時にも思ったが、古代文明の歴史はいわゆる四大文明だけでは理解できないということだ。

 遺跡見学の後、マヤ人が生活する民家を訪れた。ヤシの葉を葺いた家、中は土間、庭で豚と鶏を飼う生活に珍しさはないが、驚いたのはニコニコして出てきた老主人である。言葉はスペイン語だが、風貌は日本人といっても全くわからない。ルーツをたどれば同じなのだ。

 彼の奥さんが、トルティーヤという食べ物を焼いてくれた。トウモロコシの粉を水に溶いて熱した鉄板の上で焼く。その上にカボチャの種を砕いて塩と混ぜたものを載せて食べる素朴なもの。ガイドが、これがタコスの源流です、と説明してくれた。
 食べてみたら、古代の味がした。

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