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「800字文学館」

広辞苑(続)―訂正の話

大月 和彦

 鳴り物入りで発売された広辞苑第7版に誤りがあることが分かって話題になっている。新しく追加された項目のうち2か所の説明に誤りがあると読者から指摘されたのである。

 一つは本州四国連絡道路「しまなみ海道」の経由地の一つ今治の「大島」を山口県の「周防大島」と記述した。思い込みと確認不足の単純なミス。
 もう一つ。「LGBT」の説明「レズビアン・ゲイ・バイセクセクシャル・トランスジェンダ―の頭文字。多数派とは異なる性的傾向を持つ人々」についての疑問だった。
 L、G、Bは、それぞれ好きになる性を表す「性的指向」の概念であるのに対し、Tは、自らの性(生まれた時の体の性)に違和感を持つことの概念。したがって説明文後段はTの説明になっていないという指摘だ。
 出版社は指摘された2項目について誤りを認め、訂正後の記述を同社のHPに掲載した。
 LPGTの説明の後段が「広く、性的指向が異性愛でない人々や、性的自認が誕生時に付与された性別と異なる人々」と訂正されている。

 10年前のこと、広辞苑第6版を見ていて気になる箇所があったので、次の3点について出版社に手紙を出した。

  1. 「エヴェレスト」は「ネパールとチベットの国境にそびえ…」とあるが「チベット」ではなく中国ではないか。
  2. 政府関係金融機関に例示されている機関には廃止されたものや名称が変わっているものがある。
  3. 「労働法」の記述に中「特労法」とあるのは「特定独立行政法人等の労働法関係法に関する法律」の略だと思うが分かりにくい。

 しばらくして辞典編集部のY氏から回答があった。1中国国境と明示する余地があり、検討したい。2機会があり次第訂正する 3何とかわかりやすいように工夫したい。

 先ごろ発売された第7版でさっそく確かめてみると、1はそのまま、2と3は制度自体が改正されたため、全文が書き直され「特労法」は削除されていた。
 もともと国語辞典の広辞苑に百科事典的機能を過度に期待するのは無理なのかもしれない。

参考 出版社のHP。『広辞苑 第七版』中【LGBT】および【しまなみ海道】の解説文に誤りがありました。正しい解説文は次の下の通り。エル‐ジー‐ビー‐ティー【LGBT】①レズビアン・ゲイ・バイセクシャルおよびトランスジェンダーを指す語。GLBT
②広く、性的指向が異性愛でない人々や、性自認が誕生時に付与された性別と異なる人々。しまなみ‐かいどう【しまなみ海道】本州四国連絡道路のうち、尾道・今治を結ぶルートの通称。自動車道に歩行者・自転車専用道路を併設、因島・生口いくち島・大三島・大島などを経由する。

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