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「800字文学館」

『しんかい6500』

清水 勝

 横須賀市追浜にある海洋研究開発機構(JAMSTEC)見学ツワーに参加した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)に比べて余り存在感がないように思っていたが、有人潜水調査船『しんかい6500』が所属していると聞き関心を持った次第。
 幸運にも定期検査中の『しんかい6500』の実物を目の前で観ることができた。水深6500mの海底では681気圧となり、それに耐え得る楕円形の船体で、耐圧壁はチタン合金7,35㎝もあるという。
 一日の海底調査は8時間が限界で、6500mまで潜るのに2時間半、浮上にも2時間半かかるため、海底での作業は3時間以内とのこと。有人とはいえ操縦士、副操縦士、研究者の3人しか乗れない狭い船室。その研究分野は海底資源調査、地震発生帯研究、極限生物研究等幅広い。
 1989年以降、超深海の有人調査は日本の独壇場であったが、海底資源探査に各国が参入し、現在は世界で7隻の有人潜水調査船がある。中でも中国の『蛟竜』は7000mまで潜水でき、『しんかい6500』は世界一の座を明け渡した。ここでも中国かとの思いと共に、中国の潜水調査船が太平洋を広く、深く潜り回っている現実を知った。
 海洋国日本が中国に負けては困るとの思いで質問すると
「ええ、考えています。次世代有人潜水船『しんかい12000』の開発構想があります」との答えを聞き安心したものの、重点的な予算配分の上、早期に建造し世界に先駆け、未知の深海1万mの分野に取組んで欲しいと強く思った。
 なお、『しんかい6500』以外にも無人探査機としては『うらしま』、『おとひめ』等の6隻、調査研究船は『ちきゅう』、『みらい』等7隻があり、未知の海洋に挑んでいる状況を知ることができた。
 四方を海に囲まれた我が国にとって、気候変動、災害対策、海洋資源等のためには海洋研究開発は必須事項であり、海洋研究開発機構のさらなる発展を大いに期待したいとの思いで見学を終えた。

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