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「800字文学館」

ハブ空港とハブ港湾

斉藤 征雄

 成田―サイパンの直行便がなくなるそうである。現在運航しているデルタ航空が、五月から運航を止めることを発表した。客が減ったことが最大の理由だが、そうなると日本からサイパンに行くのは韓国経由(ソウルor釜山)かグァム経由しかなくなる。
 海外ツアーでも、韓国で乗り換えて世界各地へ行く旅程がかなり目につく。成田は十分な滑走路もなく空港使用料が割高で、東アジアのハブ空港はソウル・仁川に奪われているといわれるが現実のようだ。

 似たような現象は、港湾にも見られる。
 今日世界の物流は、石油やバルク貨物以外はコンテナが中心だが、日本へ寄港するコンテナ船基幹航路(北米航路、欧州航路)の便数が減り続けている。その結果日本の港のコンテナ取扱量が、相対的に著しく地盤沈下している。  世界の港湾のコンテナ取扱量のベスト10の内9港をアジアが占める。上海をトップに中国が7港、残るはシンガポールと釜山である。日本の港は、東京30位、横浜52位、神戸59位とふるわない。30年前は、神戸が4位、東京、横浜も10位台に入っていたので、その凋落ぶりは甚だしい。
 特に釜山との格差が大きい。東京、横浜、神戸の三港を合計しても、釜山の半分程度である。東アジアの港は、完全に釜山がハブ港となっている現実が如実に表れている。端的にいえば、日本への輸入品はかなりの部分が大型コンテナ船で一度釜山へ運ばれ、小さな船に積み替えられて日本に入る、輸出品も釜山経由で世界に運ばれているものがかなり多いということである。

 理由は、港湾整備が遅れたということにつきる。コンテナ船は年々大型化しているが、日本の港は大型船を受け入れる能力が例えば釜山に比べれば格段に劣っていると言わざるを得ない。加えて荷役設備、荷役効率の問題もあろう。
 国土交通省は、戦略中枢港湾政策を掲げて競争力強化を目指しているが、一朝一夕に事態が改善するとは考えられない。  意外に知られていない事実である。

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