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「800字文学館」

美術館巡り

塚田 實

 世田谷美術館美術大学の同級生が「国展」銅版画で新人賞を受賞したとの連絡を受けて、5月1日国立新美術館を訪れた。「国展」の招待券は持っていたが、先に気になっていた同美術館で5月7日まで開催の「至上の印象派展ビュールレ・コレクション」を見ようとチケット・ブースに並んだ。「公募展のチケットがあれば、こちらのチケットが少し割引になると聞きましたが?」。「はい、そうですが『国展』は明日から開催ですが……」。改めて「国展」のチケットを見たら5月2日から開催とある。「済みません。通常料金で良いです」。「でも折角来ていただいたので、割引入場券を差し上げます」。「国展」は見損なったが、印象派絵画を堪能した一日だった。

 5月2日また出かけた。「国展」を見る前に、5月6日で展示替えになる東京国立博物館の「名作誕生―つながる日本美術」を見ようと思った。前期のみ展示の長谷川等伯「松林図屏風」をどうしても見たかったからである。
 見終えて今度は東京藝術大学美術館に向かった。5月6日まで開催の「東西美人画の名作」展で、上村松園の「序の舞」が展示されている。制作から80年経過して2015年から本格的修理に入り、修理後初公開である。松園が「私の理想の女性の最高のもの」と語ったとされている。有名な割に人は少なく、絵を心ゆくまで鑑賞できた。
 満足して美術館を出、上島珈琲黒田清輝店でコーヒーを注文し、改めて「国展」のチケットを確かめた。開館時間は6時までと思い込んでいたが、入場は5時半までとある。もう4時半を過ぎていた。
 慌てて地下鉄に駆け込んで、国立新美術館に着くと丁度5時半だった。「お客様、もうあまり時間がありませんから、今日充分見られなかったら、またお越しください」と特別観覧券を1枚くれた。

 ばたばたと走り回り失敗続きの二日間だったが、美術鑑賞は十分楽しめた。何よりも応対してくれた方々の優しさに触れた心温まる二日間だった。

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