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「800字文学館」

講義「読ませる文章をつくる」を聴いて

池田 隆

 カルチャーセンターで講義「読ませる文章をつくる」を聴いてきた。講師は朝日新聞「天声人語」の元執筆者である。毎朝読むコラムで800字エッセイを書く時の手本としているので、彼の職歴に惹かれたのだ。また以前に*本会で素人同士が学び合った事柄を「800字エッセイの書き方」という一文にまとめ発表したことがある。それをプロのエッセイストの言を入れてブラッシュアップしたい意図もあった。
 講義はエッセイストの心得から始まる。まず「つたわる」、なるべく「こだわる」、出来れば「うごかす」が文章の三条件という。「つたわる」とは分かり易い文章の意で、前掲の一文などがその具体的指針に相当する。「こだわる」は筆者にしか書けない独自性、「うごかす」は読み手の心を揺さぶり、読後に得した気分にさせることである。
 プロならば初めの二点は当り前、問題は三点目という。読者が「そうそう(共感)」「おやまあ(驚き)「なるほど(納得)」と反応するように講師は心掛けていたとのこと。
 続いて講義はテーマの決め方、切り口、素材準備へと進むが、とくに興味を抱いたのは次の「六段法」という起承転結を応用した文章構成法とその書き順である。約600字のコラム枠を ①つかみ(起)、②うけ(承)、③④説明、⑤転、⑥おち(結) と予め六等分し、各段の要旨を決めたうえで ⑤→①→⑥→②→③→④ または ①→⑥→⑤→②→③→④ の順に書く。
 既定の枠内に短時間で完璧な文章を書くには優れた方法であろう。私は今まで当然のように①から順に書き始めていた。良いことを教えて貰った、さっそく試してみようと思い立つ。しかし気がつくと本文もやはり①から順に書いていた。
 素人は執筆の途中で考えが広がったり、論旨の矛盾に気づいたりして初めから書き直すことがある。時間を掛けて文章を練り上げる面白さは堪えられない。プロ流の能率至上主義に囚われず、素人は素人なりに**「悠遊」と書くのもまた楽しいものだ。

注 * 本文を発表する筆者所属の「企業OBペンクラブ」
  ** 「悠々と遊び心で」の意、企業OBペンクラブの同人誌名

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