お国自慢

中村　晃也

　パリでの国際会議の打ち上げパーテイの席上、参加者のお国自慢がはじまった。
「パリのエトワールのロータリーの混雑は酷いでしょ？　初心者は車の渦に一度巻き込まれたら一生出られないよ。でも何とかなっているのは我々の慎重な運転のおかげさ」とフランス人。
「ロータリーに交通信号をつければ問題解決さ。几帳面なわが国民は交通規則を厳格に守るからね」とイタリア人。
「イタリアに交通規則があること自体信じられない。全ての道に続いているというローマの道路は常に大混乱じゃないか！　その点ベルリンは静かなものだ。大手自動車会社の首脳陣は皆拘束されて、排ガス規制の勉強中なので」とドイツ人。
「交通渋滞の主な原因は酒酔い運転だよ。わが国では運転の前のウイスキーは一本限りというお達しだ」とアイルランド人。
「そう、アルコールのない食事は味気ないものだが、わが国には世界に自慢できる美味しい料理が揃っているのでアルコールの助けはいらないのだよ」とイギリス人。
「金がないのに酒を飲むのは罪悪だぜ。その点わが国ではEUという大スポンサーがいるので安心して飲めるんだ」とギリシャ人。

「酒が入ると他人のものを欲しくなる国民がいるが、わが国は土地が広いのでこれ以上領土はいらないのだよ。クリミアの人たちがロシアに帰属したいというので困っているのさ」とロシア人。
「わが国も同様です一帯一路政策が進展しているので、誰も近海に浮かぶチッポケな島なんか欲しいとはいっていません」と中国人。

「その点、領土的野心のない日本はとても付き合いやすい。国中に学校ができ、教育レベルが上がったのは日本の占領政策のお蔭だったと皆感謝しています」と韓国人。
「そう言われると痛み入りますが」と日本人。「我々は忖度といって他人を思いやる気持ちが強く、著者を慮って歴史書や公文書の改ざんなんてことは死んでもできないのです」と言って、最後にこう付け加えた。
「公務員は特に」