作品の閲覧

「800字文学館」

カーヌスティの思い出

塚田 實

 毎年7月中旬友人たちと北海道ゴルフ旅行に出かけている。一泊は温泉に泊まり、ゴルフをした後、札幌で旬の寿司を楽しむ。今年は定山渓温泉に泊まった。
 ゴルフは、小樽カントリー倶楽部で2ラウンド回った。海沿いの距離の長いコースだ。グリーンの前には池が多く、グリーンにのったはずの球がコロコロ転がって池に入り、腕のなさより不運を嘆く。
 毎年この時期は全英オープンがあり、ついついテレビを見てしまい、寝不足気味になる。今年はカーヌスティでの開催だった。

 2002年ロンドンに駐在していたとき、3日間のスコットランドゴルフ旅行に出かけた。2日目はゴルフの聖地セントアンドリュース・オールドコースでプレーし、3日目は1999年の全英オープン開催地カーヌスティでのプレーだった。それまで2日間ゴルフバッグを担いでのプレーだったので、さすがに疲れていた。マスター室でプルカートの使用をお願いすると「あなたは60歳以上ですか、それとも医者の証明がありますか?」と尋ねられ、「55歳だが……」と事情を話したが全く聞き入れてくれなかった。キャディーを頼むのも気後れして、仕方なくまた担ぐことにした。
 カーヌスティはイギリスで最もタフなコースの一つと言われている。コースにはバーン(小川)が縦横に走り、ラフの草は膝丈まで伸びている。ヴァン・デ・ヴェルデの「カーヌスティの悲劇」で有名な18番ホールでは、案の定有名なバリー・バーンに球を落とし、大叩きしてラウンドを終えた。

 今回松山英樹は2日目調子を上げていたが、18番でOBをだし、トリプルボギーとなって予選落ちした。最終日はタイガー・ウッズが一時トップに立つなど劇的な展開を見せた。最後は冷静にノーボギーでパーを重ね、18番でバーディーを奪ったイタリア人のモリナリが優勝した。

 テレビを見ながら16年前の難行苦行に思いを馳せたが、今ではそれも楽しい思い出となっている。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧