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「800字文学館」

ボーっと生きてるの? チコちゃん

首藤 静夫

 NHKのテレビ番組「チコちゃんに叱られる」が評判だ。番組の構成はこうだ。チコちゃんという5歳児がタレントの3人(うち1人はレギュラー)に質問を浴びせる。例えば、ヒトはなぜパンツをはくか?、プールで目が赤くなるのはなぜか?、乾杯でグラスをカチンはなぜか?といった具合だ。ゲストが答えられないと(大概答えられない)、チコちゃんが「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と怒り出す。ゲストがうえっ!とひるむ。このあたりが番組の売りのようだ。その後、チコちゃんとナレーターが回答と解説を始めるというものだ。

 チコちゃんはCG画像である。声はお笑いの中年男性だが、ボイスチェンジャーで女の子にしてある。決められたセリフとアドリブの区別が分からない位に上手に仕上げており、ゲストとのやりとり、ゲストへの突っ込みも面白い。番組が人気になるのはなるほどと思った。
 しかし、残念ながら私の好みではない。子供が大人をやり込める爽快さ、笑いながら見られる気楽さが番組の特徴だと思うが、なにしろ品がない。チコの柄が悪い。大人を相手に傍若無人なのだ。まさかこういう子には育たないと思うが、何でも真似をしたがる昨今では少し心配だ。

 ヒトはなぜパンツをはくか?のコーナーでは、解説を担当した某大学名誉教授(女性)がチコに質問する。
「でもチコちゃん、本当にパンツって必要かしら」。チコ、
「いや先生ははいてください」(出演者ドッと笑う)。
 これは寄席などで耳にする下ネタではないか、子供の見ている番組なのに。もう一つ、プールで目が赤くなるのはなぜか?では、犯人は塩素でなく、プール内でする利用者のおしっこ(アンモニア)に微量の塩素が結合して刺激性の物質となり、これが犯人との説明だった。本当かも知れないが、プールが待ち遠しい時期に、有効な手段も示せないまま、子供たちに不安と不快を与えるだけになった。

 思慮の足りない中身や下品なセリフはNHKでなくともよいのでは。

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