継続は力なり
昨日、国連のグテレス事務総長が長崎平和祈念式典に出席した。フランシスコ・ローマ法王も被爆地訪問について長崎市長の要請に前向きな意向を示している。一昨年のオバマ米大統領の広島訪問に続き、昨年度はICANがノーベル平和賞に輝いた。国内外の根強い反動的趨勢に対抗し、核廃絶の気運が着実に盛り上りを見せている。
学童期に長崎で被爆し、その後の七十数年間原子力技術と陰に陽に関わってきた者として、この盛り上りが無事に開花するよう願わずにはおられない。原爆投下直後に見た肌や衣服が焼け爛れた無残な被爆者の避難行列は一生頭から離れないが、前半生は原子力の科学的偉大さにむしろ憧れ、その平和利用に意気を燃やしていた。
第五福竜丸事件を切掛けに核兵器廃絶の気運が世界的に広まる。だがそれを政争の具とする活動を嫌い、積極的に政治行動する気は起らなかった。後半生になり、核兵器と原発の一体性と危険性を強く認識し、それを意識的に隠し通す政財学マスコミの欺瞞に憤りを覚える。以来ピースボートの「ヒバクシャ地球一周の証言航海」などに参加し、核兵器廃絶のみならず脱原発を唱えている。
3.11以降は小泉元首相や細川元首相も原発ゼロに向け心強い社会啓蒙を行っているが、以前から政治的にも社会的にも厳しい条件の下で武谷三男や高木仁三郎のような先駆者が核兵器と原発の廃絶を強く世に訴えてきた。
今や非核化を願いながらもその実現を目にすることなく、次々とヒバクシャたちがこの世を去っていく。その願いを受け止め、川崎哲氏は数十年間も地道な平和市民運動を続け、ICAN活動の主体を担っている。彼に続く国連平和大使の高校生など、意識の高い若者も多い。
国内外の守旧派は強力だが、我々市民はボーナスや株価が上がったからといって、人類存亡の危険性を過小評価する愚かな政権選択をしてはならない。現在の核兵器廃絶・脱原発の気運を一過性とせず、世代を超えても完遂に努めよう。
「継続は力なり」