作品の閲覧

「800字文学館」

ボーッと初島

内藤 真理子

 熱海や伊豆に行く時、いつもボーッと眺めていた初島だった。
 旅行仲間の女性五人組の「あそこに行ってみたいわね」がきっかけで、いつしか初島はボーッと眺めているんじゃなくて〝待望の〟に変わり、念願かなって行って来た。
 連休明けの良く晴れた日で、東京から熱海の定期船乗り場まで一時間のドライブで到着。船に揺られて25分。初島はたったの1時間半で行けるのだ!
 面積0,437㎢ 周囲4キロの伊豆半島東方沖の相模灘に浮かぶ島、と説明にある。島から縄文時代の遺跡が発見されているので古くから居住者はいたようだ。島の戸数は41軒、それ以上増やさないという不文律があり、ずっと守られてきたが、世の中の好景気でリゾート開発の波にのり、ここにもアイランドリゾートができて、浮き沈みはあったものの、現在はエクシブ初島のホテルが観光客を受け入れている。
 送迎バスで着いたホテルは、四方の海が見渡せる別世界。手入れの行き届いた全体が見渡せる低木の洋風庭園と、横長の本を開いたような形の建物が出迎えてくれる。
 オーシャンビューの広々とした部屋にたどり着いた我ら5人は、ゆったりとしたソファーに身を沈めると根が生えたように動かない。そして怒涛のお喋り、朝ドラ、ZOZO、トランプ、皇室関連と話題は尽きず、夕食の間も食べ且つ喋り……。折角来たのだからと温泉に浸かるも、烏の行水。そして深夜までお喋り、又、お喋り。
 翌朝も晴天!
 島一周1時間の散歩は、高低差に悩まされながらも、海のある情景を満喫。海辺に巨岩があり、江戸城の石組に使われたりストックされていたものだそうだ。
 そして最後は、熱海までの船旅。
 さざ波をたてた海と空、うっすらと見える山や半島、見えるものすべてが白から水色、青みがかったグレーの濃淡。水平線は濃い色で線が引かれているように見えたり、空との境界がなくなったり。女性5人、その墨絵の如き美しさゆえか、はたまた喋り疲れたのか、ただ景色をボーッと眺めるのであった。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧