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「800字文学館」

京都・大原、南山城・当尾の里を訪ねて

清水 勝

――秋は旅に出たい。
 ペン川柳の合宿が大阪箕面であると聞き、懇親会から参加させてもらった。併せて高校の同窓会と4年振りに京都の墓へのお参りも果たせた。
 紅葉には早いものの、外国人客が比較的少ない大原・三千院を訪ねた。三千院では杉木立の中の苔の大海原を眺めていると、大原女姿の子供行列が現れた。体験学習を兼ねた大原女ちゃんが何ともいえず微笑ましい。
 近くの実光院、勝林院、宝泉院を訪ね、抹茶をいただきながらお庭を拝見しただけではなく、庭も歩け、優雅な時を過ごす。
 翌日は奈良から30分ほどの地にある京都南山城の当尾の里、岩船寺と浄瑠璃寺を訪ねた。いずれも僧侶が講話をして下さり、仏様への理解が深まる思いで聞き入った。
 浄瑠璃寺は九体阿弥陀如来像で有名だが、七体しかなかった。二体は修復中で、九体が揃うのは5年後になるそうだ。その代わり秘仏・吉祥天女像が公開されていた。秘仏だけあって衣の色が残っていたのが印象的だった。
 なお、当尾は世俗化した奈良仏教を厭う僧侶が穏遁の地として草庵に住み、念仏に専心したと伝えられており、やがて草庵が寺院へと姿を変えたとのこと。
 奈良に戻ると、奈良国立博物館で『正倉院展』が開催されており、さらに興福寺の中金堂が300年振りに再建され、訪れる人々で賑わっていた。
 今回の『正倉院展』には56件の宝物が出陳されていたが、特に聖武天皇・光明皇后のゆかりの八角箱は見事なもので、ウミガメのべっ甲をくりぬいて貝殻片をはめ込み、螺鈿(らでん)の装飾が施されている。唐からのもののようだ。なお、正倉院展は今回で70回目の開催となり、延べ5千件の宝物が出陳されたことになるが、正倉院の宝物は9千件もあるそうだ。
 10月7日の興福寺中金堂の落慶法要はニュースで報じられ、一般公開は10月20日から始まった。その中金堂は大仏殿と並ぶ豪壮優美な建物で、屋根に輝く鴟尾を仰ぎながら多くの人に交じってお参りした。

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