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「800字文学館」

ドイツで交通事故に遭った

志村 良知

 フランス駐在中、出張先のドイツで交通事故に遭ったことがある。
 ドイツ担当が一人辞めて手薄になり、英語で商談できる顧客を急遽スペイン担当のH君にケアさせることとして紹介するための出張だった。
 顧客先の近く、私は助手席で地図を確認していた。突然H君が喚き、車が揺れ、前後でバリバリっという音とガラスが割れる音がした。何事ならんと見回すと、巨大な連結トレーラーがこちらのバンの左側に張り付いていた。我々が右折する連結トレーラーの内側にいたため、カーブでくの字に折れ曲がった長い車体に前後を挟まれたらしい。H君も無傷でまずは安心。
 外に出てトレーラーのドライバーと相対したが、こちらは二人ともドイツ語は喋れない、向こうはドイツ語しか話さないで文字通り話にならず、相手が警察を呼び、パトカー2台がやって来た。警官の一人が英語を話した。
 どうやら、内輪差考慮で中央に寄っていた右折トレーラーの内側に我々が入ったのが悪いということらしい。現場検証後2台を引きはがし、我がバンの様子をチェックし、走行主要部分は壊れていないので走って良いという裁定。しかしドライバーのH君は国外逃亡の恐れがあるので警察で事情聴取する、と連れて行かれてしまった。

 ボロボロにされた車を運転して顧客先へ。事故ってドイツ語が出来ない同僚が警察に連行されたと事情を話すと、普段なら出て来ない先方の社長が現れ、自ら警察に電話しH君の貰い下げに行ってくれた。残った者同士は事故の話をしながら段ボールとガムテープで応急処置。やがてH君が社長と共に帰って来たが、その日は商談にはならず事故の話で終わり、左と後部の窓が段ボールとガムテープだらけの車でアウトバーンを飛ばして帰った。

 H君には100マルクの罰金が追いかけて来た。経理に掛け合ったが修理費はともかく罰金は経費では落ちず、私がポケットマネーで補填した。
 禍転じてH君は気に入られ、取引はかえって順調になった。

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