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「800字文学館」

ナゴハラとは?

大津 隆文

 今年はスポーツ界のパワハラ問題、某省次官のセクハラ問題等が大きな話題となった。ハラスメントには色々あって、ナゴハラとはナゴヤ人に対するものの謂いである。
 昔から地域や民族の文化の違いを種にしたジョークは沢山ある。なるほどと思ったり腹を抱えたりしているが、言われている当事者はつらい思いをしているかもしれない。例えば次のような話に心優しいナゴヤ人は傷つくのだ。
 東京の人、大阪の人、名古屋の人三人が居酒屋で楽しく過ごし、いざ勘定の段になった。大阪人は当然のごとく割り勘で三分の一を払おうとし、東京人は今日は自分に払わせてくれと言い張り、名古屋人は?おや姿が消えている。
 或いは、名古屋の人の料理の選択基準は、一にカサ(量)、二にカネ、三四がなくて五にアジだ、とか。
 こうしたジョークには背景がないわけではなさそうだ。名古屋の人の金銭感覚や食べ物の好みについて特色があるのは事実であろう。
 お金の使い方については、嫁入りについては「娘三人持てば身代潰す」と言われるほど金を惜しまない半面、普段は極めて渋いとされる。たしかに名古屋では「お値打ち」かどうかが判断基準になることが多い。「お値打ち」とはコストパフォーマンスであり実質的な価値が大切なのだ。名古屋の人の暮らしぶりは堅実で、職業的には物作りが重視される。しかし、こうした生き方は面白味に欠けており一つからかってやろうということになるのかもしれない。
 また、名古屋の旨いものは何かと聞かれると、残念ながらこれという決定打がない。よく、きしめん、味噌煮込みうどん、ういろう、さらには鰻の櫃まぶしなどがあげられるが、いずれも実質的で外見的魅力に欠ける。お値打ち感いっぱいの「モーニング」、天むすや小倉トーストなどB級グルメも話題になるが、これらも垢抜けはしていない。
 一昔前、「世界の中の日本は日本の中の名古屋」と言われた。今や日本は世界でもカッコいい国とされるが名古屋はどうだろうか。

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