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「800字文学館」

平成最後の年末数え歌

稲宮 健一

 一つとせ、青い地球はただ一つ、蒸気機関を切っ掛けに石炭、石油を燃やしすぎ。夏が来れば思い出すはるかに広がるヒートショック。フェイクじゃないよ、抜け駆なしで頭冷やして叡智だせ。

 二つとせ、二重螺旋のDNAに小細工施し、人造人間造ったと。神のない国で神を恐れぬタブーへ挑戦。まさか北京源人が生まれないだろうね。

 三つとせ、三本柱はすわりがいい。EUか、ロシアか、インドか、はたまた日本か、三本目の役割で、かっかの米中に水掛けろ。

 四つとせ、四横綱、四つ相撲、消えて久しい両国の華。世代交代出でよ若武者国技のヒーロー。

 五つとせ、オフタイム、時は今、五本指に全力込めて、相手の選手を押し倒せ。誰の指示、俺知らぬ、俺知らぬ、知らぬ半兵衛押し通し、フェアーより損得勘定先に立ち。

 六つとせ、六十代はまだ若い。鼻っ先の人参でもあるまいし、年金受け取り、どんどん先延ばし。医学の進歩はありがたい、だがね、財政の病は治らない。手先の利息いじっても、配る資金がでてこない。

 七つとせ、豪華列車のななつ星、ローカル路線も使いよう。大枚叩いて乗るやついる。オレオレ詐欺に貢ぐより、遥かに利口な使い方。世界の味と、海と山の風情をのろりのろりと走りながら満喫す。乗りたいな。

 八つとせ、今や、傘寿はざら、卒寿、白寿って本当かい、昔年寄り生き字引で偉かった。いまは年寄りインフレだ。数が多けりゃ値が下がる。五十超えて入れるシニア大学校創ったら。長寿社会の生き方ノウハウ、これから周辺国に売れますよ。

 九つとせ、九条巡ってまだ空論、書いた奴が気に入らぬ、いじれば戦争引き起こす、こんな感情論に苦情云う。残念ながらジギルとハイドは今でも人のさが、付き合いは笑顔のジギル、備えはハイド、両方満たす案考えろ。

 十とせ、平成は十の倍数で締めくくる。勝てない戦争の戦没者へ鎮魂献身三十年、次世代は避暑地のテニスの縁で生まれたプリンス、明るいご時世が到来しますように。

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