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「800字文学館」

桂林の親友

中村 晃也

 桂林は中国広西省に隣接した広西壮族(チワン族)自治区にある。中国南方航空で成田から広州まで三時間四十分、乗り継ぎ後五十分で森林に囲まれた桂林空港に着く。友人と二人で行ったのに、「中村様ご一行」と書かれたプラカードと共に待っていたのは、流暢な日本語を話す桂林師範大学日本語学科を出たばかりの可愛い女性ガイドだった。

 翌日は龍背の棚田見学。ジープで三時間、その後往復三時間の山登り。頂上は霧で棚田はウッスラとしか見えなかった。
 三日目は各国の国旗を掲げた観光船約二十隻が一キロ間隔で下る漓江下り。雨模様に煙る奇岩怪石を左右に眺め、写真を撮りまくる。途中、数本の太い竹を縄で結わえただけの小舟が急流をついて観光船に近づき土産物を売る。終点の陽朔では桃源郷と称する少数民族の村を見学。夕食後、幾つかある市内の湖を巡り、鵜飼やらライトアップされた湖畔の寺院を見るナイトツアーに参加。

 最終日は木犀に囲まれた市営博物館見学。桂林周辺の少数民族の文物を見た後、主に清時代の陶器、文物が並んでいる美術工芸品の展示室に案内された。
 文芸員の説明では「桂林市は周辺の少数民族の生活保護のため財政的に難儀しているので、市の所有している美術工芸品を愛好家に買ってもらっている。 価格は市価の三分の一で、品質については文芸員が保証書にサインする」由。

 ガイドとはすっかり仲良くなりいろいろな中国語を習った。この地方の方言で、親友のことを「狗糞(ゴウフン)」と言うのだそうだ。犬の糞という意味だが中国の他の地方では通用しない由。刎(糞)頚の友 と同意語かと聞いたがどうも違うらしい。

 桂林空港でガイドと別れるとき、手を振って「再見狗糞」と大声で挨拶したら、 空港まで見送りに来た他の人が、連れていた犬の尻をチェックしていた。

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