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「800字文学館」

どこに行こうか

塚田 實

 家内は、我が家で月2回ニューヨーク駐在時代の友達とステンドグラス作りに勤しんでいる。子供たちが現地校で一緒に苦労した仲間だ。私が家に居ると、何かと気にすると思うので、この日は極力外出するようにしている。

 先ずは良い美術展はないか調べる。東京だけでなく横浜まで足を延ばすこともあるが、やはり上野公園をうろうろすることが多い。東京国立博物館友の会会員になったので、入出館は何度でもできる。以前は平成館の特別展だけに行くことが多かったが、本館や東洋館を丁寧に巡ると新たな発見がある。法隆寺宝物館の「ガーデンテラス」で白ワインを飲みながら、ランチを摂るのも豊かな気分になれる。上野には東京都美術館や上野の森美術館、国立西洋美術館、東京藝術大学美術館など見どころが多い。

 美術展の次は映画を探す。観たい映画があるときは、2本観ることもある。先日は「METライブビューイング」で臨場感溢れる『椿姫』を観た。映画の後時間が余ると、自宅近くの駒澤大学図書館に行く。図書館では、自分で持ち込んだ本を読んだり、「掌編小説」や「何でも書こう会」などの構想を練ったりする。

 良い美術展や映画が見つからないときはどうするか。寄席を検索する。寄席はとにかく面白い。浅草演芸ホールや上野鈴本演芸場、新宿末廣亭など、昼夜入れ替えなしで、3千円(シニア割引あり)前後でお笑いを堪能できるのだから、こんなコスパの良い場所はない。
 先日検索したら、ペンクラブの新年会にお越しいただいたこともある三遊亭とん馬師匠が末廣亭に出ている。ここはアルコール禁止なので、それなら弁当は良いものにしようと、伊勢丹の地下で特上のにぎり寿司を買い、席亭に乗り込んだ。
 とん馬師匠のネタは、ペンクラブで聞いたネタもあったが、充分楽しんだ。師匠は最後に正月らしく「かっぽれ」をお囃子とともに軽快に踊り、場を大いに盛り上げた。今年も良い年になりそうだ。

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