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「800字文学館」

先を行くアメリカ

大津 隆文

 今年の正月休みにアメリカ西海岸のサンディエゴに行ってきたが、気付いたのはアメリカでは障害者に対する配慮が身近なところで進んでいることだ。具体的には次の三つの赤ゲット的な体験をした。
 まず驚いたのは、ホテルの屋外にプールとスパ(円形の温水風呂)があったが、いずれにもクレーンの先に椅子の付いたような用具が設置されていたことだ。自力でプールに出入りできない人のための設備であろう。日本でも老人ホームのお風呂には車椅子の人のための用具が設置されているが、あちらではプールにまで配慮が及んでいる。
 次は食事に入ったハンバーガー店でトイレに行った時のことだ。中に入ると小用の便器は一つだけでしかもその高さは明らかに子供用だ。それ以外には通常の大と車椅子用の大しかない。自分のような大人が子供用を使っては申し訳ないと大を使って小用を済ませた。やれやれと思った。ところが、帰国時に空港で待合室のトイレに入ってみたらここもハンバーガー店と同じ三点セットだった。そうか、このセットが障害者に配慮したユニバーサルデザイン・設備として求められているのかもしれない。欧米の小用便器の高さに悩まされてきた身には嬉しいルールと思った。
 三つ目は電動カートである。米国のスーパーに行くと買物用カートの大きさには驚くが、座って動かせるつまり車椅子型電動カートまで用意されていた。足の不自由な人も自由に売場を見て回ることが出来て大変便利であろう。電動カートへの乗降とか商品を取る時は大丈夫だろうかと気になるが、きっと周りが助けてくれるに違いない。
 思い出したのは以前アメリカでバスに乗った時のことだ。乗車に際して運転手が家内に何か言っている。よく聞くと「ユーは座ることを望むか」とのことだ。家内がイエスと答えると、運転手が乗客に「このレディに誰か席を譲ってあげてください」と呼びかけてくれ、家内は大変恐縮したことがある。
 やはりアメリカはまだ一歩も二歩も先を行っている。

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