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「800字文学館」

オウムアムア

内藤 真理子

 『コズミック・フロント』の録画ビデオを見た。これは宇宙などをテーマにしたNHKの科学番組で素人にも解るように制作されている。  大概、番組のイントロ部分で眠くなるだが、この回は、始めの興奮気味のナレーションで、思わず身を乗り出した。 「この天体は人類が初めて出会った太陽系外からの訪問者です。これは想定外の事実なのですよ」

 訪問者は2017年10月19日に、マウイ島のハレアカラ山頂にある天文台で初めに発見されたので、現地の言葉でオウアムアム(初めての遠方からの使い)と名付けられた。  これは、縦800メートル横80メートルの葉巻型の物体である事が解った。
 カナリア諸島で観測している人に確認すると、太陽系の外から秒速26㎞で近づき、双曲線を描きながら太陽系に入って、太陽の力を借り、秒速46キロの速度で太陽系の外に出て行ったそうだ。(通常の小惑星の2倍の速さ)
 太陽系の外から来た初めての恒星間天体で葉巻型の物体だとわかった段階で、知的生命体が見つかるかも知れないと世界中の天文学者が色めき立った。
 どうしたらそんなことが解るのだろうと思っていたら、研究者が知的な電波を探すために、二億㎞の地点で8時間観測したとの説明があった。結果、人工的な信号は観えず、地球外生命体であることは確認できなかったそうだ。
 見ていると、画面上の一点が特別早い速度で動いたのが私にもわかった。だがあの星が、遠くから飛んできて、葉巻の形をしていると何故わかるのだろう。そう思ったら、パンスターズ望遠鏡で検出するのだと解説があった。この望遠鏡は、地球に衝突する可能性のある小天体を見つけるのが目的でいつも動いている。オウムアムアもそのようにして見つけたのだ。世界各地の天文台で、時間間隔をあけて継続的に撮影した画像の時間や明るさを比較することで、形状、速度、それに回転していることも解ったそうだ。
 そしてオウムアムアの正体は、コト座から30万年もかかってやって来た彗星であることも……。

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