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「800字文学館」

消費期限

稲宮 健一

 近所の生協に食料品を買いに行くと、消費期限まで残りが一日だと一〇%割引、当日の夕方に行くと五〇%割引のラベルが貼ってある。消費期限の定義はその表示された日付まで安心して食べられるという意味だ。期限内にも関わらず廃棄処分を少なくするため段階的に販売価格を操作する考えは合理的だと思う。しかし、そのようなこまめに価格操作を行わず、期限を過ぎると自動的に廃棄処分に回す店が多い。

 国内で消費期限が切れのため廃棄処分に回される割合は年間二八四二万トンの食糧の総重量のうち六四六万の二割強である。廃棄される食品のうち、まだ食べられる分はマーティさんの「もったいない」に相当する。生協のように段階的に販売価格を低減させ廃棄前の駆け込み需要を誘うのは良い一方法だが、多くの食べ物を必要としている多くの人に届け、最終的に廃棄を少なくする工夫はないものだろうか。

 消費期限日の真夜中を過ぎた瞬間に劣化が著しくなるわけでもない。食品規格と自然現象は必ずしも一致しない。そこで一案として、大量の食品を扱うのは大型のスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで、消費期限切れの数時間前に低温の冷凍装置に食品を移動する。そして、急速冷凍装置を備えた本格的な専用のトラックをそのような店に巡回させ回収し冷凍処理を施し劣化を止める。これで鮮度と時間との勝負は一時休戦状態になる。次は廉価な食品を需要者に届ける社会システムを構築することになる。新規なシステムを実現するには食品ロスを少なくしようと思う意義に賛同する人々の出現と活動とそれを支える資金が必要だ。環境保全に寄与する活動だから人材は出てくるだろう。問題は資金だ。

 一例として、生鮮食料品に環境改善に寄与する旨のラベルを貼り、多分一円か二円ほどの表示をして、購入者がその趣旨に賛同するなら、レジで寄付金の受領を打ち込み、係る団体にネットワークを通じて送金する。塵も積もれば山となるである。

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