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「800字文学館」

セントアンドリュース・オールドコース

塚田 實

 ロンドンにいた2002年のイースター(復活祭)は3月31日(日)だった。29日(金)から4月1日(月)まで休日となったので、スコットランド・ゴルフ旅行に出かけることにした。セントアンドリュース・オールドコース(OC)でのプレーが夢だった。

 OCはゴルフの聖地で人気があり、予約を取るのは難しい。昔は裏口から手を回すこともできたらしいが、当時は出来なかった。予約の取り方はいくつかある。一つは毎年10月末まで翌年の予約を受け付け抽選するが、なかなか当たらない。パッケージツアーの申し込みもあるが、高額になる。駐在員にとって最も当たる確率が高いのは、プレー日の前日午後2時までに現地で抽選を申し込むと、午後4時には結果が出るので挑戦してみることだ。

 3月28日会社の年度末処理を終えて、エディンバラに飛び、約1時間半ドライブしてセントアンドリュースへ。翌29日抽選の申し込みをしたところ幸運にも当たった。
 3月30日憧れの1番ティーグランドに立った。OCは18ホールを3時間45分で回らなければならない。18ホールのうち14ホールが巨大な共用グリーンで波打っており、ボールの位置によってはピンに向かって真っすぐパットできない。フェアウェイには深いポッドバンカーがあり、一度入ると出るのが難しい。ラフは深く、コースはヒースやブッシュに囲まれており、フェアウェイに置くことさえ難しい。海沿いのショートホールでは風に苦しんだ。また、3月いっぱいは芝生保護のため、フェアウェイでも芝生の上では打てなかった。各自小さな緑色のマットを持たされ、ボールをその上にプレイスして打つのである。難行苦行の末、プレーを終えた。

 その晩OCを見下ろすバーでシングルモルトウィスキーをしこたま飲んだ。スコアはそこそこということにしておこう。今となっては楽しい思い出で、いつもこの時期になると懐かしく思い出す。

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