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「800字文学館」

カーナビは便利だが限界もある

志村 良知

 房総半島は地形に特徴が無くどこも同じに見える。しかも道路網は複雑で昔はよく迷子になったが、カーナビで安心して走れるようになった。

 朝、ホテルの駐車場で最終目的地を我家、途中三か所の経由地をセットする。最初の経由地の電話番号が分からないので、地名で入れようとした。しかし、カーナビの地名入力は、カーナビの元データにある地名でなければならない。では地図からだ、と画面に地図を出すが、入力したい施設が無い。えい大体この辺、と入力する。二番目と三番目は電話番号入力で問題ない。
 案内開始でスタートしたら、意図しないのに上が北の北基準表示になってしまっていて見難い。路肩に停めていじっていたら、どこか強力なツボを押したらしく、いきなり全データ消去、目的地入力画面にリセットされてしまった。
 入力し直しであるが、それは直前の入力値がメモリーに残っているから簡単、と思ったのが大間違い。かなり走ってそろそろ海と思った頃、道路案内板の地名が第一の目的地よりかなり先の海岸であることに気づく。経由地の入力順を間違えたらしい。また路肩に停めてやり直し、いったん海岸に出て20キロほど海沿いに戻れ、と表示される。

 すったもんだはあったが、やれ花摘みだ、やれ地魚の鮨だ、と遊んで食っての帰路。強風が心配なので駐車場でスマホを見るとアクアラインは速度規制とある。ところがそれから小一時間走って館山道路に入った途端電光表示板にアクアライン閉鎖の文字。カーナビには木更津から千葉まで渋滞の繰り返し、湾岸道路はスムースと表示される。行く手の渋滞情報はカーナビを信用できる。東京都を抜けて神奈川に入り、横浜方面に誘導されたとき、このカーナビは首都高神奈川横浜北線を知らないことに気づく。案の定土壇場のややこしいところで、知らないくせに次で降りろの直線なのに左折だのと言い出す。これはかなり五月蠅い。黙らせるにはデータ更新料が3万円ほどかかるらしい。

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