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「800字文学館」

賞味期限

稲宮 健一

 消費期限は生鮮食料品が安全に食べられる期限、一方賞味期限は未開封の食品が食べられる期限と定義されている。消費期限は目の前の食品が劣化する状況なので、容易に理解できるが、賞味期限は未開封の食品なので、外からは分かりにくい。この定義を人に当てはめてみよう。

 人は字のごとく他の人と関わりながら生きている。消費期限は人に出会ったとき、すぐに感じ取れる味わいに譬えられる。爽やかであれば基本的なマナーが普通で、内なるものの質の良さが推し量れる。いわゆる第一印象だと思う。一方、賞味期限は直ぐには見えない内に込められた人の価値ではないか。一見人当たりがよくても、すぐにぼろが出ては意味がない。要するに人の賞味期限は自ら期限切れにならないように自己管理に励めばより長い期間が獲得できる。

 人の価値を劣化させないため健康が第一だ。感染症は衛生管理で防げ、内臓疾患や、癌なども生活習慣の改善でかなり防げるようになってきた。即ち自己管理が可能になった。医学の進歩と、食生活の向上で、体が丈夫になり寿命が延びた。お陰で、何にでも使える時間の余裕が天から与えられた。そして、この時間の使い方で人の価値が高められる。
 我々の外側は丈夫になったが、それに応じ内側の質を向上させ、長持ちさせなければならない。単に身体の健康だけでなく、頭の健康が最も重要である。体の総ての部位は司令塔たる脳と接続しその支配下にある。単なる脳トレとして、単純な算術を繰り返していても飽きる。知的な刺激で血流の循環を良くすることだ。筋トレのジムは多々あるが、脳トレのジムは少ない。脳トレに一番有効なことは生きることにわくわく感が湧き出ることだ。

 これが最近盛んなボランティア活動であり、文芸活動や、生涯活動などであろう。前者は他人からの感謝が報酬であり、後者は企業OBのような他人が面白と言ってくれることが報酬である。脳の活性化にはこれらの報酬が一番のご褒美だ。

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