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「800字文学館」

マンション工事の憂と楽。

大月 和彦

 2月からわが家の隣でマンションの建築工事が始まっている。老朽化したURの賃貸住宅の跡地に7階建て200戸を建てるという。昨年夏、開発業者が近隣の住民に説明会を開いた。日照時間、ビル風、周辺の交通や駐車場など近隣の生活環境が大きく変わることの懸念や工事に伴う騒音、振動、塵埃.安全対策などが不十分で、納得しないまま着工してしまった。市が承認した建築計画を錦の御旗に掲げての不誠実な対応には怒り心頭の思いだった。

 工事現場は、3mの塀で囲われ外部から遮断された。盗難防止や安全のためという。警備会社のセキュリテイ装置が日夜作動している。現場は、わが家の二階からは丸見えだ。始まったのは基礎の杭打ち工事だ。敷地全面に鉄板が敷き詰められ、建設機械が運び込まれた。目を引いたのがアースドリルという地球に穴をあける機械と機材や土砂を運搬するためのクローラークレーン。両方キャタピラで自走する巨大な重機だ。これが動き始めると小刻みな揺れが伝わってくる。時々震度2ぐらいの振動が安普請のわが家を襲う。その都度TVで地震情報を確かめるのだが。揺れと騒音の監視のためと好奇心から毎日現場をwatchしている。巨大な重機と少人数の作業員が一体となって動き、工事が進んでいるのが目に見えて面白い。Watchを続けていると騒音や振動の苦情を現場事務所に伝えても無駄、解決につながらないことが分かった。開発業者への怒りと不信は残るものの現場の作業員にはある種の親しみをさえ覚えるようになった。

 杭打ち工事は、杭を打ち込むのではなく、地中に掘った径1mぐらいの穴にコンクリートを流し込んで杭を造る工法だ。掘削機の先端に取りつけたバケットを回転させて掘り進む。できた穴に円筒状に組んだ鉄筋を埋め込み、コンクリートを流し込む。ヘルメットをかぶった作業員がオペレーターの指示により、機械の動きに合わせて動き回っている。見ていて面白く楽しい。震度2程度の揺れに文句を言う気が萎えてしまった。

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