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「800字文学館」

へんな言葉

大森 海太

「お大事に、どうぞ」毎月、血圧の薬をもらいに近所の病院に行って支払いをすませると、受付のお姉さんがこう言ってくれる。そういえば現役のころ電話の最後に「よろしく、どうぞ」と言う人がいた。なんだか変である。「どうぞお大事に」「どうぞよろしく」と言うべきところだと思うのだが。

 スーパーやコンビニのレジの女の子は、レシートが要らないと言うと「あ、だいじょうぶですか?」と言う。何でもかんでも、だいじょうぶかと訊ねる。そもそも大丈夫は「ますらお」から来た言葉で、普通は「顔色が悪いようだけれど、大丈夫ですか?」とか、かなり状態が悪い時に用いるものであろう。

 この頃の若い子はすぐに「すごい、すごい、すごーい」などと連発するが、もともとは「陰にこもって物凄く」などと陰惨な場面に用いる表現である。そればかりか「すごいきれい」などと言ったりする。「すごい」は形容詞(連体修飾語)で、「きれい」という形容詞を修飾するのは副詞(連用修飾語)の「すごく」、つまり「すごくきれい」と言うべきであろう。

「とっても美味しい」という言い方は私たちでも使ったりすることがあるものの、本来「とても」のあとは否定形がくるべきで、「とても駄目だ」とか「とてもじゃないけれど」のように使われるものだ。なかには「全然素晴らしい」などと言う人もおり、これに至っては全然正しくない。

 このほか「見れる」「着れる」などのら抜き言葉も耳障りなのに、最近ではテレビなどでも平気で使われているようだ。だいたいNHKのアナウンサーですら、ときどき変なイントネーションで喋ることがあり、昔のような教育はされていないのではないかと懸念される。

 私から見て気になる「へんな言葉」を書き連ねてみたが、そもそも言葉は時代とともに変化していくものだから、明治の人から見れば我々もへんな言葉をしゃべっているのかもしれないし、まあそんなに気にすることではないのかとも思われる。

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