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「800字文学館」

浴衣は朝顔の柄がよい

斉藤 征雄

 高校生の孫娘が、修学旅行先の京都から写真を送ってきた。嵐山の渡月橋をバックに六人の友達と全員浴衣姿。はちきれそうな若さが目に眩しい。
 近頃京都では、レンタルの浴衣での町巡りが流行しているらしい。しかもそのにわか大和撫子の多くは外国人とりわけ中国人とも聞く。おそらく、浴衣姿で派手なポーズの記念写真を撮るのが目的なのだろう。

 京都ならずとも、夏の女性の浴衣姿は見た目に美しく涼しげである。もっとも見た目とは違い、着ている本人は結構暑いらしいが。
 盆踊り、花火、夜店のそぞろ歩きなど夏の風物に浴衣はよく似合う。というより浴衣姿そのものが日本の夏の風物詩というべきかもしれない。
 平安時代、その頃のお風呂は蒸し風呂だったらしいが、入浴の際に着た肌着を湯帷子(ゆかたびら)と言った。江戸時代にそれを肌の水分を吸い取る目的で、湯上りに着るようになって「ゆかた」になったということなので語源は「ゆかたびら」のようである。
 それを庶民も着るようになった。だから浮世絵の美人画にも浴衣姿が多く描かれている。

 浴衣の魅力は、素足に下駄の艶っぽさもあるが、何といっても絵柄の大胆さにある。画材はさまざまで、幾何学模様をはじめ鳥や動物まであるが、華やかなのはやはり花柄である。それも梅や桜などの小紋ではなく大柄な花がよい。大柄といっても蓮や百合などは陰気な感じがするので、それよりも私は牡丹、向日葵など陽気な花が好きだ。
 中でも好きなのが朝顔である。あの単純な花を、大きく大胆にあしらった浴衣は実にすがすがしい。朝顔の花柄をみると、毎朝花の数を数えた夏休みが懐かしく蘇る。朝顔は、日本の夏の象徴にも思える。

 朝顔は、遣唐使が種を薬用にするために中国から持ち帰った。それを丹精に育てて日本の朝顔にした。中国の朝顔は少し違って葉がハート型であるが、花色は日本と同じ紫が中心という。
 京都で浴衣を着る中国人にも、ついでに朝顔の共通の文化を少しは感じてほしい。

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