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「800字文学館」

「パーシバル将軍の将校クラブ」

吉田 眞人

 ドイツ人の友人が 「マザト(ドイツ人はSAをサと発音出来ず、ザと言う)は英国とシンガポールに居たのだからこの話は知っているだろう?」 と教えてくれたJOKEを記す。

 1942年初頭、山下将軍率いる日本軍(約3万人)は、破竹の勢いでマレー半島を南下し、シンガポールを目指していた。シンガポールを守備する英国軍(約8万人)を率いるのはパーシバル将軍である。
 ある朝、将軍は、何時もの通り、島の中央東部にある小高い丘の上にある将校クラブで、モルトウィスキーをちびちびし乍ら(SIP)、うつらうつらしていた。そこに伝令が来た。「将軍、大変です!日本軍は猛進して、早やマレー半島南端のジョホールに迫りつつあります!」 将軍は南側にある港を見下ろした。そこには強力な英国艦隊が停泊している。 将軍 「我が軍は盤石だ」。
 次の朝、再び将校クラブでモルトウィスキーをちびちび。伝令が来た。「将軍、緊急事態です!敵は北側のジョホールバルから攻めてくる構えです!」 将軍 「ジョホールバルとシンガポール島を繋ぐ橋は爆破済。あんな湿地帯を重機は渡れない。心配無用だ」 南側の港を見ると昨日と同様全くの平穏、艦船は戦闘準備を整え終えている。我が軍は不滅と思い、モルトウィスキーをもう一杯。
 数時間後、伝令。「一大事です!何と敵はゴムボートでジョホールバルを超え、ブティキマ高地に向かっています!」 将軍 「あそこ(シンガポール最高峰163メートル)には大砲を準備済だ、問題ない」 と、モルトウィスキーをさらにもう一杯。砲声が近くなったと思いながら、うつらうつらした。大砲は南に向けてあり、北へ旋回するのには限度がある事を忘れている。
 更に数時間後、伝令。「将軍!とんでもないことになりました。ブティキマ高地は陥落し、敵は東に進軍。このクラブの正門に近づき、蹴破って入ろうとしています!」 将軍は酔いが廻った眼をぼんやりと開け、曰く。「彼らはこのクラブのメンバーなのかね?」 

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