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「800字文学館」

間違いから進化

大森 海太

 ついこの間のこと、何かをしながら片手間に見たテレビは、DNAについての番組であった。すなわち卵子が受精した瞬間、お父さんとお母さんのDNAがドッキングして子供のDNAが生まれるのだが、その際どちらにも属さない新種のDNAが平均七〇個くらい出来るのだそうだ。DNAの母数を聞き漏らしたので七〇個が何パーセント、あるいは何PPMに相当するのか分からないが、とにかく神さまでも万能というわけにはいかないらしく、両親のDNAを百パーセント子供に伝えることは難しいそうである。これを突然変異と称し、結果的にはこれが人類の進化に寄与しているということである。

 そんなわけで我々も神さまの手違いにより、両親から受け継いだのではない、一部オリジナルの因子を持っている(全部が親のコピーじゃないぞ)。とうぜん子供たちもそれぞれのオリジナルを持っているし、孫たちもまた然り。こんなことを考えているうちに、なんだか私はわけもなく嬉しくなってしまった。

 話は全然違うが、以前『悠遊』でもご紹介したように、毎朝一時間かけて朝粥、つけあわせ、味噌汁などの朝食を調理している。単純作業ながら三〇余の食材を用いているので、それなりに複雑な作業手順が確立されている。ところがボケが進んだせいか、時たま手順を間違えることがあって慌てて修正するのだが、怪我の功名というのか、まれに間違えがかえって新たな発見、改善につながることがある。このまえも味噌汁のダシをとるとき乾燥ワカメを入れるのを忘れ、出来あがった汁にあとから入れたのだが、なんとこのほうがワカメの風味が失われずに美味いということに気がついた。

 人間は万物の霊長で、頭を使うことによって今日まで進歩を遂げてきたなどと己惚れているが、そうとは限らない。意外と偶然の間違いから、結果的にうまくいったということも少なくないのではないか。そうだろう。神さまだってたまには間違えるのだから。

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