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「800字文学館」

MGCテレビ観戦記

内藤 真理子

 オリンピックの代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」をテレビで観戦した。男子が八時五十分、女子が九時十分スタート。いつもならマラソンにはビールとつまみが付き物だがあまりの早朝で無し。走るのは男子がたったの30名、女子が10名、いつもとは全然違う緊張感だ。
 放映も男子がTBS、女子がNHKと、特別仕立て。
 男子を主に見て、コマーシャルになるとチャンネルを変えるので忙しい。
 男子がまず神宮外苑のイチョウ並木からスタートを切った。直後に設楽悠太が飛び出す。日本橋を過ぎ10キロ通過時には二位との差を大きく開けて日本記録。そう、彼は2018年の東京マラソンで日本新を出して一億円を獲得したのだった。淡々と走る姿にまたもや……と思うが、解説は甘い予測を立てない。
 沿道には大勢の観衆。それに比べて走者が少なくマラソンの感じが出ない。いつもなら一般参加が大勢いて、中にはカンガルーのぬいぐるみを着た人や、バニーガール、海賊キッド等々一緒に走っているのだが、選手たちは、そんなことを思い浮かべるだけでも不謹慎なほど緊張している。
 ダントツの設楽以外の第二集団は横一列で牽制しあっている。優勝候補の大迫傑がお腹を押さえた。しかし附いている。30キロを過ぎてから設楽がペースダウン。浅草寺前の折り返しを挟んで第二集団の9人は、設楽の表情を見てはやる心が顔に出るが、ペースが上がらない。37キロを過ぎ坂の手前でやっと9名が一気に設楽を追い抜いた。設楽はもう追いつけない。差がどんどん開いていく。38キロ、8人が横一列。登りがきつくなる。ここで中村匠吾が前に出た。残り3キロでスパート。彼が先頭ではあるが目の前には聳え立つ坂。服部が迫る。大迫が続く。42キロ地点、デッドヒートはまだまだ続く。中村が後ろを振り向いた。右手を高々と上げた。一位中村と二位の服部がオリンピックの出場権をゲット。
 出場枠は残り一つ。下馬評では本命だった大迫、設楽を残して!

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