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「800字文学館」

ノルウェーの旅3 北上するバスの旅

志村 良知

 1998年5月25日。
 南部のベルゲンから中部の港町オーレスンまで北上するバスの旅。
 ノルウェーの国土の西部は峩々たる岩山を氷河が一寸刻み五分試しで切り刻んだフィヨルド地形で、現在でも鉄道は無い。道路もフェリーでのフィヨルド越えと、つづら折れ、トンネル、切通しでの峠越えの連続になる。
 実はストライキのため、昨日の朝には今日バスが出るという確証は無く、現地旅行代理店ではレンタカーについても相談していた。しかし昨晩鯨料理を食ってホテルに戻ると嬉しいことに臨時バスが出ることをフロントから伝えられたのだ。
大型バスの右最前列、景色と運転手の様子がよく見える席を占めて定刻8時に出発。いきなり峠を一つ越え、昨日奥から快速船に乗ったソグネフィヨルドをフェリーで横切る。
 地元民畏るべしで、どこで知ったのか臨時バスはかなりの混み具合、バス停で待つ人降りる人も結構いる。スイスのポストバスのような役割もあるらしく、運転手が郵便袋や新聞の束の積み下ろしもする。
 複雑な地形を縫って走る車窓の風景は素晴らしい。花札に例えると点札ばかりでカスが無い。海岸沿いに走るかと思うと、一転つづら折れを登って雪山を背景に海を見下ろし、トンネルをくぐる。春真っ盛りで広大なタンポポの斜面がいたるところに広がっていて、畑にはリンゴ、アンズらしき花盛り。100mはある滝や雪を被ったカール地形という、20点札もちりばめられている。
 バスと各フィヨルドのフェリーのダイヤは当然であるが同期していて、待ち時間というのはほとんどなく乗船待ちの車列を無視して一番先に乗り込む。一度バスが遅れたのか、リヤゲートを開けて待つフェリーに道路からノンストップで乗り込んだこともあった。

 フェリーに乗る事4回、17時50分にオーレスンに着いた。軍港らしく軍艦がたくさん停泊している。この日は私の誕生日、水槽でこやつが食いたいと指定できるロブスター専門店でシャブリを抜いて豪華な晩餐。

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