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「800字文学館」

ノルウェーの旅4 オンダルスネス線(ラウマ線)絶景の旅

志村 良知

 1998年5月26日。
 オーレスンの港やアールヌーボーの町並みを見物し、11時40分のドンボース行バスに乗る。途中のオンダルスネスまで2時間半あまりのバスの旅。この町はロムスダール・フィヨルドの最奥部にあり、海からいきなりスイス風のアルプ、その後ろに雪山が聳え素晴らしく風光明媚である。
 ホテルには早々にチェックインしてオクさんは風呂に。私はこれからのチケットを並べてみていて異変に気付いた。明日乗るはずのトロンハイムからボードーの個室寝台の切符が翌々日の日付になっている。これではその先に予約してある北極圏の船旅や帰りの飛行機に乗れない。さあ大変、駅に走る。結果、日付の変更はできたが個室は確保できず、差額100クローネが戻ってきた。これで今夜のワインのランクを上げよう。

 5月27日。ディーゼル機関車が牽く10時のラウマ線ドンボース行列車に乗る。実はこの切符はベルゲン駅で駅員と押し問答の末買ったものである。オンダルスネス・ドンボース間の鉄道の車窓はトーマスクックが「ヨーロッパの車窓10」に選んだ絶景だという。ところが、出札の駅員はドンボースでの待ち時間が2時間を超えるとしてバスを薦めてきた。そこをどうしても汽車から景色を見たい、と訴えると「景色なんてバスも汽車も一緒だぜ」と捨て台詞とともに売ってくれた切符である。

 発車するとすぐ岩山が窓にかぶさってくる。スイスにもない光景だ。列車はどんどんラウマ川のⅤ字谷に分け入っていき、円弧型鉄橋でUターンするとともに対岸に渡る。さっきまで走っていた線路が谷川を挟んで左車窓下に見える。ゆっくり高度をとりつつ列車はトンネルに入る。体に妙な横Gが掛かり、トンネルを出ると谷は右の車窓に移って谷底が深くなっている。つまり、二度Uターンして高度を稼ぎ急斜面を登っているのだ。
 ドンボース手前の駅に今は廃墟の転車台が見えた。蒸気機関車があのつづら折れを走る姿に思いを馳せる。

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