宰相の句
相前後して、日本の総理大臣についての報道があった。
一つは、安倍首相の在任期間が、歴代の総理の中で最も長くなったというニュース。11月20日に通算で2887日になり、最長であった桂太郎を超えたのである。もう一つは、中曽根元総理が11月29日に、百一歳という長寿を全うして亡くなったという訃報。
中曽根氏は、一時「風見鶏」と揶揄されたこともあったが、政権をとると五年の長きにわたり首相を努め、行政改革を断行するなどの実績を残した。
アメリカの大統領とは、ロン・ヤスと互いにファーストネームで呼び合う仲となり、日米関係を揺るぎないものに。更には、韓国も訪問し結びつきを強めるなど、外交的にも大きな成果を収めた。
その首相が退任に際して詠んだ句が、
であった。この句のように、一線を退いたあとも確固たる信念に基づいた活動を続けて生涯現役を貫いた。自分の庵に外国の要人を招き、親しく語り合ったのはよく知られている。政治の話しだけでなく、芸術や文化の話も語られたと想像されるが、世界に通用する知識と教養がなければできない事であろう。
片や安倍氏。同じく首相として主導力を発揮し、経済政策を強力に推進したことを評価する人もいるだろう。米国との関係についても、ドナルド・シンゾウと呼び合える間柄になったが、その一方で韓国との仲がぎくしゃくし、日韓関係は最悪の状況にあると言ってよい。
米国大統領との付き合い方も、ゴルフを一緒にプレーするとか、相撲を観に行くなど、中曽根氏とは趣を異にする。
わが世の春とばかり、権力を欲しいままに振るっているかに見受けられる。象徴するのが、安倍首相が主催する「桜を見る会」であろう。詠んだ句が、
平成を名残り惜しむか八重桜
である。一人の人間に権力が集中し長期にわたると、弊害が出てくる。
似た所もあるが相違点も多いこの二人をどう評価すべきか。詠んだ句が何らかの示唆を与えてくれるかも知れない。