作品の閲覧

「800字文学館」

アベノマスクが届かない!

内藤 真理子

 二〇二〇年三月の初めに友人からワンポイント刺繍のある手作りのマスクが送られてきた。世の中、マスクが買えない、トイレットペーパーがないと騒ぎ出した矢先で、普段からボランティア活動をしているその友人の行動の速さに感激しながら使わせて貰っている。

 「国民全員に洗って使えるマスクを届けます」と、安倍首相が言い出したのも、たしか三月だった。一住所当たり二枚届けると閣議決定されたのが四月七日。スピード感をもって、とも言っていた。
 だが、もう五月中旬過ぎなのに、私には届いていない。

 一方、使い捨てマスクの不足はいよいよ深刻で、感染リスクのある医療従事者など、絶対に必要な人にも行き亘らず大変な騒ぎになっている。
 テレビでは、新たに作ったり輸入したりのニュースもあるのに、あれはどこに行ってしまったのかと思うほど、必要な人には届かない。詐欺まがいの高額マスクが横行している。

 アベノマスクがすでに届いた人もいるようだが、髪の毛が入っていたの、ゴミがついていたのと苦情があるという。
 だから遅れているのだろうか?
 私は言いたい!「遅れている場合じゃないでしょう!」

 こんな時こそ、偉そうな人が雁首揃えて不備を謝るなら、真摯に
「使い捨てマスクが不要不急な人は、お手元に届いた洗えるマスクを使って下さい。ゴミなどが入っていたら洗って下さい」と、ここで深々と頭を下げ、お願いしてもらいたい!
「マスクが足りないのです!」と、悲鳴を上げてもらいたい!
 悲鳴を上げている国民の身になって決めたんじゃないの!

 自粛の今、私のような主婦はスーパーに行くときくらいしかマスクは使わない。こんな人が全員、安倍のマスクしか使いません!と言ったら、使い捨てのマスクが必要な人はどんなに助かることか!

 これを書き終わった今は、五月末、未だアベノマスクは届かない。
 世間では既にマスク不足は解消されたそうだ。
 でも、あの時真剣に腹を立てた気持ちだけは、忘れるのはよそう。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧