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「800字文学館」

予定表

大森 海太

 近頃は猫も杓子もスマホで、私のようなガラケーはマイノリティになってしまった。飲み会などで次回の日程調整するときもスマホでチェックしている人が多い。この調子では近い将来、手書きの手帳など消えてなくなるのかと思ったらさにあらず、年末には大手の文具売り場に数十種類の手帳が並んでおり、聞いてみると、スマホだけでは間違えて消してしまうおそれがあるので、手書きの予定表を併用する人もけっこういるようだ。

 私はもちろん手帳派で、カレンダー形式の予定表になったものを愛用しており、ペンクラブ(書こう会、月例会)のほかに、月4回の囲碁会、ゴルフ(昨年34回、すなわち平均月3回)、各種飲み会、時には早稲田の公開講座、その他諸々、手帳を取りだして予定を眺めることも楽しみのひとつであった。
 ところがコロナ騒ぎが始まるとこれらの行事は次から次へと中止になり、3月、4月の予定表はバツ印ばかり、これでは予定表の体をなさなくなってしまった。
 予定表を見る必要がなくなると、日にちのけじめがなくなってきて、いつのまにか1週間がたち10日が経ち、気がついてみれば「ヤヤもう5月だ」というありさま、こんな調子が続くとボケが進んで、しまいには自分のトシも分からなくなるんじゃないかという気がしてきた。

 マ、それはそれで好いかもしれないが(酔生夢死)、それにしてもちょっと早いかな、などと考えるうち、フト思いついて、真新しい2020年手帳をネットで取り寄せて(従来品よりやや大判)、カレンダー形式の予定欄にその日その日の些細な出来事を書きしるすことにした。
 孫たちをどこそこの公園に連れてったとか、どんな酒を飲んだとか、こんな本を読んだとか、散髪に行くのをやめてバリカンを買ったとか(別途報告)、他愛のないことばかりであるが、やらないよりはマシだろうし、漫然とした時間の経過を文字にして認識し、その日その日を楽しめればいいのかななどと愚考しております。

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