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「800字文学館」

この演説には驚いた

野瀬 隆平

 国が膨大な借金を抱えていることについて熱弁をふるっている。 「1000兆円借りているのなら、必ず1000兆円貸している人がいないとおかしい。誰が貸しているんですか、皆さんが貸しているんですよ」とたたみ掛ける。
「政府の借金が多いから、とんでもねえなんて言ってる人がいっぱいいるけど、何が、問題なんです? 借金が多きゃ、そんな大変ですか? 皆さん、何か間違えてんじゃありませんか。皆さんの家計簿、皆さんの事業会計と国の国家会計は全く違うんです。一番違うところは、国はいよいよになって金が無くなったら、どうすりゃいいか」。「簡単です。刷ればいい」

 この一か月ほど、仲間と同じようなテーマで意見を交わしているところだった。コロナ対策で、政府は膨大な財政出動を余儀なくされている。一人10万円頂けるのは有り難いが、これから更に必要なお金は増えて行くだろう。取りあえずは、国債で賄うしかないだろうが、借金を増やしていって本当に大丈夫なのか。そんな議論の中で、興味深いサイトがあるよと教えてもらったのが、音声入りのこの演説のシーンである。

 これ、誰の演説だと思いますか。熱く語っているのは、麻生太郎氏なのである。平成24年(2012年)に長野県で行った講演会で、金融・財政について聴衆に分かりやすく語りかけているところだ。民主党政権の時で、麻生さんが気楽な野党の立場にいたからかも知れぬが、その熱弁振りから彼の本心であることは間違いない。
 さて、問題は今でも同じ考えを持っているかどうかである。彼が束ねる財務省のお役人や、それを支持する評論家や学者は、この考え方に与しないのは明らかである。
 だんまりを決め込んでいるかに見える麻生さんは、財務省に取り込まれて考えを変えたのだろうか。何かもっと大きな力が働いているようにも思える。
 いずれにしても、コロナ騒ぎが一段落したあと、抱え込んだ膨大な借金を政府はどのように処理するのだろうか。注意深く見守りたい。

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