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「800字文学館」

保健所とPCR検査

大月 和彦

 新型コロナウィルス対策で、緊急事態宣言の解除が視野に入ってきた。感染症騒ぎの中で、よくわからない点が多くあった。今後の検証を待ちたい。
 PCR検査の問題もその一つ。毎日、感染者の累計と増加数(新たに陽性と確認された人数)などが発表されるが、PCR検査の件数は発表されていない。外国に比べ極めて少なく、6千~8千件ともいわれているが、件数がなぜ公表されないのか、明快な説明がない。
 検体採取の技術や検査能力の問題があり、無症状の一般の人に実施しても無意味という説明や、検査を増やすと陽性者が多く出て医療崩壊につながるのを避けるためという説明もわかりにくかった。
 5月初、検査件数が少ないことについて、安倍首相は「目詰まりがあって検査を増やせという指示が浸透しなかった」と釈明した。専門家会議の尾身副座長は「件数が少ないのは、わが国ではSARSなど新型感染症がこれまで起きていないので、体制の整備が不十分だった。限られた検査の資源を重症化のおそれがある人に集中させたので急増に対応しきれなかった。検査を地方衛生研究と保健所だけに任せていたのは「そもそも無理筋」と認め、業務過多やマンパワー不足が常態化している保健所の実施体制に、初めて触れてている。
 保健所は、感染症対策のほか、母子保健、難病、依存症対策など地域の保健衛生の施策・業務を行う役所。新型コロナウィルス感染症が拡大してからは、感染を心配する住民から問い合わせ、帰国者・軽症者のフォロー、PCRの検体の回収、感染経路の追跡など感染症対策の最前線で活躍している。

 保健所に勤務したことがある知人は、バブル崩壊後に行われた行財政改革で、保健所の統廃合が進められた結果、所数は469所(2020年)と半減、職員は一割削減されるなど大ナタが振るわれ、保健所の弱体化が進んだと指摘する。住民不在の「上からの目線で」行われた統廃合と合理化により保健衛生に対する関心が薄れることを危惧していた。

 今度の危機に直面し、保健所の体制に問題があったという。日ごろから異常事態への備えを怠ったことのツケが回ってきたのだ。

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