旗幟鮮明にする中国
コロナ厄災に対する責任の大半は中国にある、という世界的に定着しつつある風潮を打ち消すのに、中国はやっきになっている。
そんな姿を見ていて思い浮かぶのは、彼の国に対して世界の列強がかつて何をしたかである。歴史を200年ほど遡ってみる。清の弱体化に付け込んで各国が介入をはじめる。アヘン戦争に続き、日本も日清戦争を仕掛ける。外国からの侵略に対抗するために起きた義和団の乱。自国民を保護するためにと各国は連合して清に攻め入る。
北京を連合軍に制圧された清は、北京議定書の締結を迫られ、不本意ながら合意せざるを得なかった。
その中には莫大な賠償金の請求も含まれていた。なんと銀4億5000万両(テール)である。これに39年間の分割払いの利息を加えると8億5000万両にも上った。どれほど大きな金額だったか。当時の清の年間予算が、およそ1億両であったことから考えても分かる。
今回のコロナによる被害に対して、中国に賠償を求める動きが一部で出ている。中国の指導者の頭の中に、過去の忌まわしい屈辱の記憶が甦って来ているとしてもおかしくない。彼らが強硬な態度をとる根が、ここにあるのかも知れない。
何も中国を擁護しようとしているのではない。歴史の大きな流れの中で物事を捉えるべきだと云っているのだ。過去から学んだ中国が、帝国主義的な「逆襲」を心の中で考え始めているのではないか。
かつては、鄧小平の時には「韜光養晦」を唱え、本心を隠しながら着々と準備を整えていた。習近平の時代になった今、ここがチャンスと堂々と攻める「戦狼外交」へと舵を切ったのだ。
自由を価値観の中心に据え、民主主義のもとで繁栄してきた国で、貧困や格差による問題が表面化し、明確になってきた。国家の運営に対する基本的な姿勢が根本から問われる事態になっているのではないか。
これからの世界をリードする国々がどんな価値観を持ち、どんな考えに基づいて国を運営するのか。立ち位置の違いが対立の種になるであろう。