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「800字文学館」

VIVA! サッポロ

首藤 静夫

 札幌に逗留中の当クラブ、Mさんからのメール。ご当地は梅雨の影響が少なく快適だそうだ。長くいたいと。その昔札幌に勤務した小生にも懐かしい土地だ。

 北海道の夏はコロナ禍がなければとても楽しい。湿気のない冷涼な気候に加え、エゾマツ、トドマツの針葉樹やポプラ、白樺の林など北欧風のメルヘンの世界が広がる。
 この時期の食の楽しみはビールとジンギスカン料理だろう。先ず、ビールはサッポロ! 当地の気候にぴったりの爽やかな喉ごしで、これに熱々のジンギスカンを合わせると、ジョッキが何杯もすすむ。
 札幌の繁華街の一隅にある「さっぽろジンギスカン」。プレハブの2階にある狭い店で「三密」の典型だ( 最近はどうだろう)。ここの肉とタレが実に旨かった。肉が小振りなので食べやすいし、味がしつこくないから幾皿おかわりしても胃袋に消えた。ただ、接待用には使えない。接待には○○ビール園の個室を用意したが今一つだった。こういう食べ物は狭苦しい席で、仲間うちで、生ビールで、わいわいやるのがいい。
 寿司は、内地の人には口に合いにくいかも。観光で食する分にはいいが、幾度も食べるとその脂っこさが気になる。北国産ゆえやむを得ないのだ。在任中、東京の友人が江戸前のタタミイワシや干魚、海苔などを送ってくれた。彼の温情と気配りが忘れられない。
 札幌の夏は花火や祭で盛り上がる。この時期、花火は毎週のようにどこかで上がる。大通公園を埋め尽くすビアガーデンも圧巻だ。一万数千席が時にはぎっしりになる。YOSAKOIソーラン祭りは有名になりすぎ、ショー化した嫌いがあるが、やはり夏の風物詩だ。

 北海道によらず、北国の人の夏祭にかける意気込みは凄まじい。夏が過ぎさると、来たる冬を迎える気分に変わっていく。それだけに短い夏を楽しみたいのだ。
 今年はこれらの大事な行事がコロナ禍でことごとく中止になった。ジンギスカン屋も閑古鳥であろう。Mさんはどうしていることやら。

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