次世代のEU
「二人三脚」に「ムカデ競走」。お互いの歩調が合わないと、前に進まないどころか全員が転んでしまう。そんな競技を連想させる出来事であった。
今回のコロナ厄災によって落ち込んだ経済を、どの様に回復させるのか。世界中の国がこの難問に直面している。
ヨーロッパの諸国は、ただでさえ難しい上に、もう一つ問題を複雑にする要素を抱えている。EU27の国の多くは、自国の通貨を持っていないので、各国が個別に政策を決めるには限界があるのだ。
EU全体としてどうすれば良いのか。まとめ役であるドイツやフランスは、これまでの危機に際しては、各国が自分の国の責任において解決すべき問題だと、冷ややかに見ていた。しかし、今回はそうは行かない。経済危機の範囲や規模があまりにも大きく、自分たちの国にも直接影響が及ぶので無視することが出来なくなった。
基本的な考え方や財政状況が違う国をまとめるのは容易ではない。
「倹約国」と呼ばれる、オランダやオーストリアにデンマークやスエーデンなどの北欧諸国を加えた一団がある一方、財政には後ろ向きで「緩い国」と云われるイタリアやスペインなどが存在する。
5日間の協議の結果、EU諸国が一つにまとまって財政政策をとることにかろうじて合意した。総額、7,500億ユーロ(約93兆円)に上る復興基金の創設である。返済不要の補助金と、返済を要する貸付金の割合はどうするのか、どの国にいくら配分するのかで大いに紛糾した。
原資は欧州委員会が発行する債券であるが、EUが債務を共同で負担するのは今回が初めてである。
この基金は、「次世代のEU」(Next Generation EU)と名付けられた。2027年から30年間にわたって返済されることになっている。要するに、次世代に債務を負わせるのだ。基金を作った現世代の人間として複雑な思いがあって、この名称にしたのであろう。
さて、独自の通貨を持ち、財政政策を自分で決められる日本は、どのように経済を復興させるのだろうか。