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「800字文学館」

空気

稲宮 健一

 我が家の住所は横浜市戸塚区だが、登記の所在の半分は港南区である。今回菅氏が自民党総裁に選ばれるかも知れない。港南区の地元から総裁、即ち総理大臣が出ることは大変におめでたいことだ。
 さて、菅氏が急浮上したのは二階氏や、河村氏によると、そういう空気だと説明された。日本のトップが党内の空気で押し出されたということであれば違和感を持つ。確かに、安倍総理の女房役として、総理の表から裏まで総て知り尽くし、政官界という怪物がうようよ泳いでいる中で、調整役、根回しなど長年の政権を支えてきた実績は見上げた手腕の持ち主のようだ。

 かつて、戦前に若手が戦争の机上シミュレーションを行ったが、いずれの想定でも勝てる見込みはないと結論を出した。しかし、国の空気は開戦へと流れて行った。お神輿の雰囲気で国が動いてはこまる。
 今、米国ではトランプ、バイデンで次期大統領を巡り激しい攻防が繰り広げられている。駆け引きに誹謗中傷も多いが、総てを曝け出すという点で、透明性が高ことは評価できる。自分で空気を作っている。

 安倍総理は古い長州閥の流れ受け、三本の矢という毛利家の家訓を基に自らの政策を掲げ、実行して行った。門地、門閥に寄り掛かるのは感心しないが、国のトップに立つにはなにがしのカリスマ性が必要だ。
 小泉総理がブッシュ大統領(子)とプレスリーまがいの即興で場を盛り上げたり、安倍・トランプはゴルフで遊び心を開くなど頭を空にした付き合いも政治劇の一コマか。

 もし、菅氏が最終的に選ばれるなら、どんな政策を掲げて吸引力を発揮するのだろうか。永田町や、霞が関はお手の物だろうが、世界の菅はまだ未知数だ。最初は善幸フー同様に、義偉フーだろう。待っているのは膨張指向の中華、核がからむ分断国家の半島、延々と平和条約を結ばない国とどう付き合うのか、さすが菅と評価されるようになってもらいたい。港南区からヒーローが出たとなってもらいたい。

(二〇二〇・九・一〇)

鈴木善幸総理(一九八〇年就任)は最初海外で善行フーと言われた。

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