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「800字文学館」

「浮世絵FIVE‼ 世界を変えた5人の絵師たち」

川口 ひろ子

 8月末にBSテレ東で放映された浮世絵と現代文化の繋がりを探る番組「浮世絵FIVE‼ 世界を変えた5人の絵師たち」を鑑賞した。

 浮世絵とは何か? 番組内で北斎館館長安村敏信氏は「一口で言えば江戸時代の風俗ルポ」と表現し、浮世絵は博物館のガラスの向こうに納まっている美術作品ではないと主張する。番組は、海外でも愛好者が多い漫画、アニメやアイドル文化、街歩き等、様々な現代若者文化に大きな影響を与えている浮世絵について、5人の絵師を採り上げて解説する。以下年代順に
 1 鈴木春信  お藤、お仙など町娘をスカウトしてスターに。アイドル文化の元祖
 2 喜多川歌麿 ミクロ表現の超絶テクニシャン。漫画、アニメへの影響大
 3 歌川広重  東海道五拾三次、名所江戸百景 等の街歩きの達人
 4 葛飾北斎  キュビズムの魁。卓越した画力は世界中の美術家に影響を与える
 5 歌川国芳  ポップなタッチは現代の漫画やアニメの手本となる

 日本国内では花魁が主役の低俗で淫靡な絵として人気はいま一つ盛り上がらない浮世絵であるが、近年ヨーロッパをはじめとした諸外国での評価は格段に高い。その理由の一つは「卓越した絵力(えじから)」だ。もう一つは、150年前の彼の地ではアートは一握りの上流階級の為だけのものであったが、同じ頃の江戸では、浮世絵は町人たちに愛され爆発的な人気を得ていた。民衆の為にこのような高度な文化が存在したことへの驚き、この2つが高評価の源となった。
 最近40年で国内での評判は大幅に変化してきている。2020年2月にデザイン変更された日本のパスポートには葛飾北斎の「富嶽三十六景」の絵柄が採用されている。また歌川国芳は、海外での日本の漫画やアニメの大活躍により表舞台に浮上して来た新顔の絵師だ。「今後も隠れた才能が続々と現れるだろう」と安村先生は予想する。

「世界を変えた……」はいささか大袈裟であるが、浮世絵と現代のポップアートとの関係がよく解り大いに勉強させてもらった。

 

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