葱の頭と大根の尻尾
近ごろは自転車での買物を極力避けて、隣町の八百屋や少し遠いスーパーまでリュック背負って歩いていくようにしている。狙いは運動不足の解消だが、重い物でもリュックで運べばラクラクということに遅まきながら気づいたからでもある。それに隣町の八百屋は激安でありがたい。とはいえ、レタス3個で100円と言われても我家では消費しきれないから痛し痒し。
息子いわく、
「お爺さんのリュック姿に違和感はないけれど、お婆さんはどうかなぁ」
「えっ、お婆さん?」
「いやいや、年齢に不足はないよ、とっくの昔にお婆さんの資格ありでしょうが」
などと、私に老婆を自覚させたいらしいが、最近は見慣れたのか何も言わなくなった。
ところで、スーパーの客に男性の姿が目立つようになった。もちろん新型コロナウイルス騒動に伴う自粛やテレワークと無関係ではないだろう。その多くはカップルで、老夫を従えた老妻もいれば若い男女もいる。男性は必ずしも重い荷物の運搬役ではなく、女性よりも品選びに慎重で熱心な様子が微笑ましい。彼はきっとグルメで今夜のシェフに違いない。
さて、会計を済ませてリュックに詰め始めたら、そのカップルが隣にやってきた。チラリと見ると、米や肉、牛乳に野菜や果物といった大量の品を2人で仕分けている。
そこで男が言った。
「レタスとブロッコリーは僕の袋に入れていいけど、葱と大根はイヤだな」
その気持ちわからんでもないが、何故イヤなのかを考えてみると面白い。
大のオトコが葱や大根の頭なんぞ覗かせて公道を歩いてたまるかという性差別的意識? それとも、西洋野菜はカッコイイから他人に見られてもいい、いや、むしろ見せたいくらいだけれど、和野菜、それも葱や大根のたぐいが見えたんじゃ所帯じみていて生活感丸出しでしょ、という東西野菜差別的発言? その伝でいけばジャガ芋も男爵✕でメークイン○、赤カブ✕でラディッシュ〇、ピーマン✕でパプリカ〇かな、でも山葵や京人参は断然○だよね!