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「800字文学館」

魔法と科学

内藤 真理子

 コロナ禍のお陰でZOOM勉強会を体験している。画面に映る参加者が一人ずつ別の場所で生き生きと話しているのを見ると、未来の世界に来たような……、いや、以前に読んだハリーポッターの世界に入り込んだような不思議な気分になる。
 ハリーポッターでは、階段の途中の壁に掛っている歴代校長の肖像画が、そこを通りかかったハリーに、額の中から表情豊かに話しかけてくる。更に、他の額の肖像画も交えて会話をする。今私が体験しているZOOMの世界と似ている。
 明らかに違うのは、もうこの世にいない人の絵と話を交わすのだから、やはり魔法でしか成し得ないだろう。

 ハリーポッターが、魔法の学校ホグワーツに入った時、新入生歓迎会で天井を見上げると、ビロードのような黒い空に星が点々と光っていて本当の空のように見える魔法がかけられていた。
 私の参加しているZOOM勉強会の画面では、参加者の数だけブースに入っている人がいて、それぞれの背景の中で動作をする。中にはバーチャルの海の中にいる人がいたり、遠く離れた山荘にいる人のブースからは鳥のさえずりが聞こえてきたりと、居ながらにしていくつもの魔法の世界を覗き見ることが出来る。
 しかしこのようにZOOMで体験出来るのは、人智、科学のなせる業。
 ハリーポッターは、魔法の世界を舞台にした冒険小説なので、好きな食べ物があっという間に出てきたり、食べ終わるとテーブルはきれいになり、すぐにデザートが目の前に並ぶ等は珍しくもない出来事。
 箒に乗って空を飛ぶ授業があり、チョコレートについているおまけのカードは、話をし……アッこれはZOOMの画面と同じパターンだ。
 すると、今に、魔法の力ではなく、科学を駆使して、空飛ぶタクシーや、一瞬にして入れ替わるテーブルなどが現実世界に現れるかも知れない。
 とは言っても、私は何度見ても自分が写っている画像の左右が理解できないで、映るたびに、右に左に頭を動かして首を傾げている。

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