英国の夏
「英国の夏はウィンブルドンに始まり、ジ・オープンで終わる」と言われていた。
前者は6月最後の月曜日から2週間行われるテニス大会で、後者は7月第3週の木曜から4日間行われるゴルフ大会である。各々の正式名称は「ジ・チャンピオンシップ、ウィンブルドン」「ジ・オープン チャンピオンシップ」であり、全英とか競技名という単語は入っていない。そんな限定語を入れなくとも自明だろ、ということである。
ところが今年はコロナ禍で両大会が中止及び延期となってしまった。これでは英国に夏は来なくなってしまうではないか!
事実、今年7月のロンドンの最高気温は連日20度前後で、25度程度が僅か4日。最低気温は各日8~15度で、夏不在であった(尤も9月に30度近い日が数日あったが)。
かつての滞英時にウィンブルドンを覗いてみたことがある。当日チケットブースに行ったら、幸運にも「リターンドチケッツ」制度で、無事入場できた。この制度は、終日有効のチケットの持主が、退場時に主催協会に返却したものを再販売するもので、この売上げは全てチャリティとなる。チャリティを重視する英国の伝統と共に、この大会のみに使用される歴史の重み十分のセンターコートを、味わうことが出来た。
「ジ・オープン」は幾つかの代表的なリンクスで開かれる。リンクスは海沿いにあり、めまぐるしく変わる天候と海からの風を如何に御すかが試される。勿論防風林等はない。今年は、会場として唯一南イングランドにあるサンドイッチのロイヤルセントジョージで行われる予定であった。ここは、小生が唯一プレーをしたことのあるリンクスでもある。おなじみの、何処に転がるか判らないフェアウェイ、多くの蛸壺バンカーで、記録するに値しないスコアではあったが、びっしりと芝の生え揃った見事なグリーンと、古色蒼然としたバーで飲んだビタービールの味を覚えている。来年に延期となったこのコースでのテレビ中継が今から楽しみである。