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「800字文学館」

観天望気でゲリラ制圧

志村 良知

 気象庁は、来年から植物、動物の季節による変化や挙動の観測を植物は34種から6種へ、動物は23種を全廃すると発表した。気象庁の最大の使命である気象観測は正確に較正された計測器によるべきで、蛙や鶯が鳴いたか、タンポポが咲いたかはいわば風流であって、税金を投入して行う気象観測ではないということであろう。

 現在の天気予報は、観測データを集めて未来の空気の流れをスパコンで数値予報することから始まる。データは網の目に張り巡らされた有人無人の気象観測点の他に、気象レーダー、気象衛星、船舶や民間航空機、定時に飛ばすレーウィンゾンデ(風船)、などからも集める。風任せの風船とはまたアナログな、と思うが、高層までの気象を立体的に観測する手段は今でも風船を飛ばすほかない。これに加えて人間の目や皮膚感覚による気象観測も行われており、観天望気という気象用語も生きている。定時に専門の気象観測技師が雲を見、空気を皮膚で感じ、視程を測っている。観天望気の結果は数値予測に加味され、気象庁の予報官が最終的な予報を出す。

 最近、この観天望気をデータとして使い、究極的にきめ細かい局地予報を行う手法が民間気象予報会社で行われている。全国に観測協力員を配備し、数知予測で荒れそうな地域の観測員に警戒警報を発して怪しげな雲が現われたら写真を撮って送ってもらう。このデータは時に一か所で数百に及び、予報が困難なゲリラ豪雨を始め天気の急激な変化の予測に凄い威力となるという。
 もちろん、短波長・高速スキャンの超高性能気象レーダーや大型スパコンなど、いわば重火器でゲリラに対応しようという研究も行われており、テストでは好成績を収めている。しかし、近代戦の戦訓によればゲリラは重火器では制圧できない。
 ゲリラには観天望気、スマホという軽火器を持った集団を要所に迅速に配置する工夫と、集まったデータの解析技術向上の工夫の方が柔軟で正確な予報が出せそうである。

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