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エッセイ・コラム 政治・経済・社会

事業仕分けの明暗

田谷 英浩

「暗」から書く。昨年の行政刷新会議の事業仕分けの中で「何で二番じゃいけないの」の一声を契機に科学技術分野の予算にもメスが入ることになった。ノーベル賞受賞者たちの猛抗議も虚しく、予算削減は現実のものとなり、私の友人の勤務する独法・科学技術振興機構(JST)の人件費にもおよんだ。我が友人はその煽りを食らって、来年の定年を待たず三月末退職した。こんなに早く身近な形として表れたのには驚いた。
 JSTとは一般には聞き慣れない名前である。しかし元宇宙飛行士の毛利衛さんが館長を勤める日本科学未来館もその一部門、と言えばお分かりいただけるかも知れない。上野の科学博物館が自然科学に重点を置いているのに対し、科学未来館は最先端の科学技術を体験学習できるところ(お台場)として人気がある。
 我が友人はJSTの中で全国の大学、特に地方大学に対する産業連携の支援を担当していた。国に申請される研究開発テーマの中から、特に予算の少ない地方大学の研究開発テーマを洗い出し、優先順位をつけて予算化するという作業である。当然のことながら、いくつかの大学や理工系教授から頼りにされ、地域イノベーションの創出といったことにも携わっていた。

「明」の方は、朝霞市の国家公務員宿舎建設凍結である。ことの経緯については何度か「エッセイ・コラム」等でも書き綴っているので省略する。しかし民主党のマニフェストに過ぎないと思っていた地元保守系の連中も、ここに来て漸く国の方針が転換したのだという事実を受け止めるようになった。
 今では武蔵野の林をいかに守り、育てるかという環境派に転向する気配も見え始め、市民活動が一定の成果を挙げたことになった

 流行語にもなった「事業仕分け」がこんなにも身近で感じられるのは得難い経験と言うべきであるが、故郷に帰る前述の友人とはホロ苦い酒を呑むことになった。

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