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エッセイ・コラム 政治・経済・社会

民主党は公務員制度の改革をできるか

大平 忠

 いま、民主党代表選を前に控えたNHKテレビの公開討論で、小沢一郎と菅直人の話を聞いた。聞いていて、一つ大きな疑問が残った。
 二人とも、終始一貫「脱官僚」を唱えていた。菅はこの20年の日本の停滞は官僚に責任があるとまで言い切っていた。
 しかし、二人とも公務員制度改革については一言も言及していない。質問者からも突っ込んだ質問は出なかった。

 ところで、この1年間を見るに民主党の「脱官僚」とはいかなるものであったか。
 日本郵政の社長に、大蔵事務次官だった斎藤次郎を当て、鳩山は「有能な人はそれなりに活用しなければならない」と弁解して、我々は唖然とした。なんと、この文言は長く自民党が使っていた言い草とまったく同じだったのである。
 その後の天下り人事は、かつての自民党時代に比べても、はるかに目に余るものがあった。舌鋒鋭く天下りを追及していた長妻も、いまや目が見えないようである。

 自民党時代を簡単に振り返ると、安部内閣は渡辺喜美行革大臣の奮闘もあって、相当な改革案を作成した。その頃の『公務員制度改革について』という閣議決定の内容は素晴しく、やるじゃないかと思ったことを覚えている。
 その後、安部内閣の後福田内閣も渡辺行革大臣は頑張って福田を説得し、ほぼ安部内閣を継承した仕事をやったと思う。「公務員制度改革基本法」は民主党の修正も入れて成立した。
 まったくだめだったのは麻生総理である。せっかくの基本法の展開をめぐって、骨抜きをかなりやった。「官僚と喧嘩するのでなく使いこなさなくてはいかん」とよく言っていた。内実は、麻生が官僚に使いこなされていたのである。
 いつ頃だったか、谷人事院総裁が甘利総務大臣とやりあう一幕があったが、いま思うに、人事院の機能を内閣に奪われ、官僚の既得特権を剥奪されることに対し官僚の総代として必死の抵抗をしていたのである。福田・麻生時代の自民党は、片山虎之助、町村など官僚出身政治家を筆頭に安部時代の改革案をつぶしにかかる連中が大勢いたのは間違いない。

 1年前の民主党を支持した人々のなかには、「脱官僚」を支持して投票した人が多数いたはずである。鳩山のマニフェスト違反の最たるものの一つである。
 民主党は、安部内閣時代の「公務員制度改革基本法」の精神と方向と比べ、大きく逆行、骨抜き作業にいそしむばかりだった。国家戦略室の格下げは、心ある官僚も嘆いたことであろう。

 菅にせよ小沢にせよ、この公務員制度改革に対する今後の態度は要監視である。政治主導の表看板と人気の事業仕分けで、我々は目をくらまされてはならない。本日の感想である。

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