政治・経済・社会
四百余州をこぞる十萬余騎の敵
これはご存知の蒙古襲来の歌で子供のころのうろ覚えだが、難事にあたるとつい口づさむ私の愛唱歌である。元歌を探していたところ、阿部、志村両先輩が蔵書の中から見つけて下さった。
元歌は永井健子(けんし)の 「元寇」、
「四百余州を挙る 十万余騎の敵 国難ここに見る 弘安四年夏の頃」。
鎌倉武士の奮闘は御物「蒙古襲来絵巻」にも残されている。
日中友好条約以来、両国の関係は良好で、いまや中国は米国を抜いて日本の最大のお客さまである。多くの日本企業も進出して、このまま行けば良いなと願っていたところ、近頃どうも中国の様子がヘンだ。
国威おおいに揚がるや、日本の古来の領土に勝手に領土宣言して、日本企業を人質にとって実力行使に及ぶ。海軍を大拡張して、日本だけでなく周辺諸国に領土紛争をふっかけ、反米軍事政権国家が生まれるとすかさず援助してその国を手なずけて資源を手にいれ、さらに海軍基地獲得を狙う。狙われているミャンマー、スリランカ、イラン、アフリカ諸国の点と線を結ぶと、アジア各国の海上生命線を制覇する戦略が明白である。かって中国はパナマ反米政権からパナマ運河を買収しようとしたが、今度はベネズエラが狙われるだろう。石油資源に加えて、中国海軍は大西洋側に核ミサイル原潜の基地が欲しいのである。
何が中国に起きているのか。私の見るところ、ここ十年で中国は大きく変身した。古書のレーニン「帝国主義論」によると、資本主義は発展すると帝国主義に変身し、世界市場の再配分を要求し、領土、資源、海上覇権を求めるとある。中国のことである。
他方、その近くの先進国の企業は価格競争を挑まれて国内では対抗できなくなり、海外へ工場を移転する。国内は低成長、低雇用、低賃金に追い込まれると、これまた古書のマルクス「賃労働と資本」に書いてある。これは日本のことである。
さて、この中国の強いご要請に弱くなった日本はどのように対峙するべきか。小沢一郎さんは師匠ゆずりで、米国を見限りアフガン沖の洋上補給も降りて、郎党200人をひきつれて中国への朝献外交を始めたように見える。これに対して松下村塾ご出身や新野党は中国へ毅然たる対応を求めるが、中国に人質を取られている経済界はちょっと待ってくれ、ご穏便にどうぞというところであろう。
尖閣島問題はこれから何度も起きる。これを譲ると今度は沖縄も古来中国の領土だと宣言して漁船、次いで軍艦を出してくるだろう。そこで日本は来たら必ず侵犯漁船を拿捕して船長を懇々説諭したうえで国外に追放する、という措置を決めておき、国際的にも宣言しておくことだ。軍艦を出してきたら安保理事会に提訴すると宣言しておくことだ。同時に中国に挑まれているインド、米国、オーストラリア、フィリピンと連合戦線を結成して毅然たる対応をとる。各国単独では、かってモンゴル帝国にやられたように、各個撃破されてしまうだろう。
日本は「元寇」を胸に秘め、柳腰、しかし対抗連合戦線を作って頑張るのだ。
この中国の世界に対する強腰、挑発はいつまで続くか。これも資本主義の宿命で、拡張を続けるといずれ中国も大不況に見舞われる。そのとき、中国は国内過剰生産の品物を海外に買ってもらわなければならなくなる。対抗連合戦線に対して、いつまでも高姿勢ではいられない筈である。