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エッセイ・コラム 政治・経済・社会

中東はまだ熱い

富岡 喜久雄

 チュニジアのジャスミン革命は燎原の火ならぬ砂漠の枯れ草玉のように転がって、エジプトさらに隣のリビアにも飛び火した。

 中東諸国にはイラク、サウジ、カタール、バーレン、クエイト、UAEとかなり回ったがリビアは計画倒れで逃してしまった。だがこうした国を回ってみると、何故ここでイスラムの教えが生まれ、独裁的首領が現れて支持もされ、各国が緑と月をあしらった国旗をもっているのかが判ったような気がしてくる。

 雨の降らない平原は強烈な太陽で熱せられ、夜は放射冷却で冷やされ、そして砂漠化する。5月にクエートからバグダッドまで走ったことがあるが国境近くが一面の緑だった。しかしこれも一ヶ月ほどで枯れて元の土漠にもどってしまう。これでは農業、牧畜も一部の河畔でしかやれない。

 まことに過酷な大地である。だから嘗ての彼らの生業はシルクロードの隊商か逆にそれを襲う盗賊になるしかなかっただろう。それが即断即決の強い首領を必要とし、単純明快な「目には目、歯には歯を」のハムラビ法典を誕生させ、さらに戦いは必然的に敵、味方双方の未亡人を生むから、扶助として妻は4人までが許されたのだろう。イラクの土漠で降るような星空を眺めつつ、デーツで作るアラブ焼酎アラックを舐めながらこんなことを考えた。

 しかし、天の配剤は良くしたもので、こんな不毛の地の地下に石油という富を恵んでくれていたのだ。この富は住民にも還元されて、医療費や教育費が無料の国は多かったから住民の不満は大きくはないとみたが、それでも石油の富は独裁者の手に集中する。それを恣意で使えれば、威信のための軍事費や身内の奢侈や蓄財に使われてしまうのは世の常。今や中東諸国も変わった。国民の所得が上がり人口も増えた。しかし石油で得た富を投資する産業が育たない。先進国への投資しか使い道がない。したがい教育された失業者が増えることになる。これに情報技術の進歩で為政者の独善が暴露されれば不満は募る。起こるべくして起こったジャスミン革命だった。

 いまや嘗ての為政のための格言
「由らしむべし、知らしむべからず」ではすまない時代となった。
為政者は以って瞑すべきだろう。

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